一口に「2液混合ディスペンサー」といっても、ポッティング・注型・シール(FIPG/CIPG)など、工法によって必要な仕様は異なります。
本記事では、2液混合ディスペンサーを利用する代表的な工法と、工法ごとに適した装置の選び方を解説しますので参考にしてください。
ここでは2液混合ディスペンサーを利用する代表的な5つの工法を取り上げ、工法ごとの目的・材料・重視すべき仕様を一覧にまとめました。
| ポッティング(封止) | |
|---|---|
| 目的 | 液状樹脂を流し込んで硬化させ、対象部品を覆って保護する |
| 代表材料 | エポキシ樹脂・シリコーン樹脂・ウレタン樹脂など |
| 粘度帯 | 材料によって異なる |
| 吐出量・形態 | ワークのサイズや封止範囲によって異なる |
| 真空・脱泡の要否 | 用途によって必要 |
| 重視仕様 | 対象位置への精密な吐出と適切な混合比 |
| 注型(モールディング) | |
|---|---|
| 目的 | シリコーン型などへ液状樹脂を流し込み、製品を製造する |
| 代表材料 | エポキシ樹脂・ウレタン樹脂など |
| 粘度帯 | 材料によって異なる |
| 吐出量・形態 | 型のサイズに応じた大容量の吐出 |
| 真空・脱泡の要否 | 必要な場合が多い(真空注型など) |
| 重視仕様 | 型の細部まで樹脂を行き渡らせる充填圧力と気泡の抑制 |
| シール(FIPG/CIPG) | |
|---|---|
| 目的 | 部品同士の隙間に液状のシール材を塗布して塞ぐ |
| 代表材料 | シリコーン系・ウレタン系の液状ガスケット |
| 粘度帯 | 高粘度 |
| 吐出量・形態 | 塗布ラインに沿って一定量を連続吐出 |
| 真空・脱泡の要否 | 推奨【要確認】 |
| 重視仕様 | 途切れのない均一な連続吐出による密閉性・気密性の確保 |
| 接着 | |
|---|---|
| 目的 | ワーク同士の間に接着剤を塗布して接合する |
| 代表材料 | 主剤と硬化剤を混ぜる2液性樹脂(エポキシ・ウレタン・アクリルなど) |
| 粘度帯 | 材料によって異なる |
| 吐出量・形態 | 接着部位に応じて点状の吐出から広範囲の塗布まで |
| 真空・脱泡の要否 | 条件による |
| 重視仕様 | 硬化が始まる前に吐出を終えられる混合・吐出性能 |
| 発泡(発泡ガスケット・充填) | |
|---|---|
| 目的 | 空間や隙間に発泡材を充填し、防水・防塵・断熱・振動軽減などを図る |
| 代表材料 | 2液ウレタンフォームなど |
| 粘度帯 | 低粘度(温度や配合比によって変動) |
| 吐出量・形態 | 充填する空間に応じた量を吐出 |
| 真空・脱泡の要否 | 不要 |
| 重視仕様 | 材料に合わせた混合比の調整と、発泡速度に合わせた吐出速度 |
ポッティングとは、電子基板上の特定部品などへ樹脂を吐出し、対象物を樹脂で覆って周囲から物理的に遮断する加工です。対象位置へ正確に吐出する必要があり、目的やワークによって求められる精度も異なります。
一方、注型はあらかじめ用意したシリコーン型などへ樹脂を充填し、硬化させて製品を量産する方法です。型の形状が複雑になるほど細部まで樹脂を行き渡らせる必要があり、より高い吐出圧力や大きな吐出量が求められます。
なお、ポッティングと注型のどちらも、気泡が入り込むと不良の原因となるため、脱泡処理などの対策が必要です。
ポッティング用の2液混合ディスペンサーを選ぶ際は、まずどの業界のどのようなワークに使うのかという前提条件を整理する必要があります。
ポッティングの目的は、対象部品を樹脂で封止し、防水・防塵・絶縁・耐振動といった性能を持たせることにあります。材料にはエポキシ樹脂・シリコーン樹脂・ウレタン樹脂などがあり、求める性能に合わせて選ぶのが一般的です。
そのため、2液混合ディスペンサーも使用する樹脂の粘度や混合比に対応できる機種を選ばなければなりません。
ポッティングでは対象部位を漏れなく覆う必要があるため、吐出量・吐出位置の精密な制御や、1回ごとの吐出量のばらつきを抑えるショット精度が重視されます。また、樹脂によって粘度が異なるうえ、業界によっては真空下での作業が求められるため、対応できる粘度の範囲や真空ポッティングへの対応可否も確認しておきましょう。
注型(モールディング)は、前述のとおり型に樹脂を注入・硬化させて、同じ形状の製品をつくる工法です。
型のサイズや樹脂の種類によって、2液混合ディスペンサーに求められる性能は大きく変わります。
注型は製品の量産からサンプル品の試作まで幅広く用いられ、用途に合わせて樹脂の種類も選び分けられます。加えて、複雑な形状の型や大型の型など、業種や用途によって使う型も様々である点を押さえておきましょう。
材料はエポキシ樹脂やウレタン樹脂が代表的ですが、用途によっては特殊な配合の材料が使われる場合もあります。
注型では樹脂が硬化し始める前に型へ必要量を注入しきらなければならないため、型のサイズに見合った吐出量を確保できる性能が求められます。また、形状が複雑な型では、細部まで樹脂を行き渡らせるための吐出圧力も欠かせません。
なお、注入時に気泡が混入すると品質不良につながるため、真空注型や脱泡処理に対応した装置が前提となるケースもあります。
シールとは、2つの部品の隙間にシール材を充填して塞ぎ、密閉性や気密性を高める作業です。
接合したいワークA・Bがある場合、片方のワークに未硬化のシール材を塗布し、硬化する前にもう一方のワークを組み付ける方法が「FIPG(Formed In Place Gasket)」です。シール材がワーク同士に密着した状態で硬化するため高いシール性を得られる一方、分解には手間がかかります。
これに対して、シール材をワークへ塗布して硬化させた後、もう一方のワークで圧縮して隙間を塞ぐ方法が「CIPG(Cured In Place Gasket)」です。硬化したシール材がゴム状のガスケットとして働くため、分解・再組立てがしやすくメンテナンス性に優れています。
使用する材料や目的は様々ですが、一般的に分解の予定がなく高いシール性を重視する場合はFIPGが、分解・メンテナンスのしやすさを重視する場合はCIPGが採用されます。FIPGは塗布から組み付けまでの時間が限られ、CIPGは硬化後の形状がそのままガスケットになるため、どちらを採用するかによって装置に求める性能も変わるでしょう。
シール材の塗布にムラや途切れがあると、そこから気体や液体が漏れる原因となります。そのため、ワークのサイズや表面形状に合わせて、一定の太さで途切れなく連続吐出できる性能が欠かせません。
接着は、2液性の接着剤を用いて異なるワーク同士を接合する作業です。
接着剤にはエポキシ樹脂・ウレタン樹脂・アクリル樹脂など様々な材料がありますが、2液混合ディスペンサーで扱うのは「主剤」と「硬化剤」を混ぜ合わせることで硬化が始まるタイプです。
また、接着部位や目的によって、ピンポイントの吐出が必要な場合もあれば、広い範囲への塗布が求められる場合もあります。
接着では、主剤と硬化剤を適切な配合比で混合し、硬化が進む前に吐出を終えなければなりません。そのため、粘度差が大きい材料や配合比の差が大きい材料でも、均一に混合できる性能が求められます。また、ノズル内に残った材料が硬化して詰まるのを防ぐため、残った材料の排出機能や洗浄機能も確認しておきたいポイントです。
発泡とは、発泡ウレタンなどを対象のスペースへ充填し、気密性・防水性を高めたり振動を抑えたりする作業です。
2種類の材料を混ぜると化学反応によって内部に無数の気泡が生じ、材料が膨らみながら硬化してスポンジ状の構造になることから「発泡」と呼ばれます。
発泡に使う代表的な材料が、2種類の薬剤を混合して膨張させる2液ウレタンフォームです。
隙間を埋めて防水性や防塵性を高めるほか、内部に含んだ空気によって断熱性やクッション性を持たせる目的でも幅広く活用されています。
発泡作業では2液を混ぜた直後から反応が始まるため、正確な混合比に加え、発泡速度に合わせた吐出速度・吐出量の制御が求められます。また、ノズル内や周辺に付着した材料はすぐに固まってしまうため、洗浄機能の有無も確認しておきましょう。
2液混合ディスペンサーは、ポッティング・注型・シール・接着・発泡といった工法によって、求められる吐出量・吐出精度・真空対応・洗浄機能などが大きく異なります。
装置を選ぶ際は、まず自社の工法と目的を明確にし、そのうえで使用する材料の粘度や配合比、ワークのサイズ、真空・脱泡の要否といった条件を整理しましょう。
これらの情報をまとめて装置メーカーやベンダーに伝えれば、自社の生産ラインに合った機種や構成の提案を受けやすくなります。
液体の組み合わせによって必要なスペックが大きく異なる2液混合ディスペンサーだからこそ、使う目的によって装置を選ぶことが第一歩。
そのため、ここでは使用する環境や製造する製品から、適切な2液混合ディスペンサーをご紹介しています。
電子部品など
正確な吐出が必要なら
エイ・エム・ケイ |
大量生産品など
配合比がシンプルなら
ナカリキッドコントロール |
分析機器など
微量吐出を重視するなら
日本ソセー工業 |
|
| 製品名 | マゼダスDタイプ
![]() 引用元:エイ・エム・ケイ公式HP
(https://www.amk-j.co.jp/mazedas/d-type/) |
比率固定式HR-50
![]() 引用元:ナカリキッドコントロール公式HP
(https://www.nlc-dis.co.jp/products/double/hr50.html) |
STP-150
![]() 引用元:日本ソセー工業公式HP
(https://www.sosey.co.jp/product-list/supershot2/stp) |
|---|---|---|---|
吐出精度
液体を吐出する精度を指します。メーカーによって保証値(カタログ上のスペック)と実績値が異なります。また、公表していないメーカーも中にはあります。 |
実績値:±0.1% (※吐出条件、樹脂仕様により要相談) |
高精度 ※詳細記載なし |
保証値:±1% |
混合比率
2液混合ディスペンサーで対応している主剤と硬化剤の割合のことです。主にミキサーとポンプの種類によって混合比率や調整の可否が変わります。 |
100:100~100:1 | 100:100~100:4 | 記載なし |
吐出速度
2液混合ディスペンサーが主剤と硬化剤を吐出するスピードのことです。カタログ上の吐出速度が速いと、ターゲットへスピーディに液体を吐出できます。 |
0.01ml/s~190ml/s | 記載なし | 0.0050ml/s~0.30ml/s |
適応粘度
2液混合ディスペンサーが対応している液体の粘度のことです。カタログと異なる粘度の液体を使用した場合、液だれやノズル詰まりなどを引き起こすおそれがあります。 |
1~100,000mPa・s/25℃ | 1~100,000 mPa・s/25℃ | ~200,000mPa・s |
吐出量
1秒間に吐出できる液体の量を指します。吐出量を細かくコントロールできる装置は精度が高く、製品の品質向上にも寄与します。 |
0.007ml/shot(1秒)~無制限 | 2.5~294 ml/shot | 記載なし |
吐出方式
液体を吐出する方法のことです。2液混合ディスペンサーは、連続的に液体をターゲットへ吐出する連続吐出と、その都度充填・吐出を行う間欠吐出があります。 |
連続吐出/ワンショット吐出/定量吐出/繰返し吐出/他機連動吐出 | 間欠吐出 | タイマー吐出/手動(連続)吐出 |
タンク容量
液体を貯めておくタンクの容量です。製品によって容量が大きく異なります。2液混合ディスペンサーは、主剤・硬化剤それぞれに独立したタンクがあります。 |
各15L・30L・50L・60L・ 80L・100L・200L ※A液・B液タンクの組み合わせは自由 |
20Lオープンタンク (ステンレス製) |
4L耐圧ガラスタンク×2基 |
公式HP
掲載の 対応液体例 2液混合ディスペンサーで利用できる液体の種類です。製品によって対応している液体の種類が異なるため、選定時はしっかり確認する必要があります。 |
記載なし | ||
【選定条件】
Googleで「混合吐出装置」と検索し(2024年5月16日調査時点)検索結果全ぺージに表示された公式HP14社、イプロスの「混合吐出機」ページ掲載企業の計18社を調査。
そのうち、2液混合ディスペンサーを扱う15社の中から、以下の条件で3製品を選定しています。
・マゼダスDタイプ…15社の製品のうち、吐出精度の保証値が±2~3%以内、実績値が±0.5%以内で最も高い2液混合ディスペンサー
・比率固定式HR-50…15社の製品のうち唯一、シンプルな構造により低価格化を実現と記載のある2液混合ディスペンサー
・STP-150…15社の製品のうち、吐出量が最も少ない2液混合ディスペンサー