2液混合ディスペンサーでは接着剤の主剤と硬化剤など、用途に応じて性質の異なる様々な材料が使用されますが、その中には何かしらの特性を持たせるために「フィラー(充填剤)」が混入されているものも少なくありません。
フィラーは材料の性質や機能を向上させるものとして有用ですが、扱い方によっては微粒子が液剤の底に沈んでしまう「沈降」や、ノズルに微粒子が詰まることによる「吐出異常」、またそれらに関連した品質不良など様々なリスクにつながることも事実です。
このページでは、2液混合ディスペンサーでフィラー入り材料を使用する際のトラブル例や対処法についてまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
フィラー入り材料を使用する中で、液剤の底にフィラーが沈んでしまう「沈降」が生じた場合、品質不良や2液混合ディスペンサーの故障など深刻なトラブルへ発展することがあります。
そもそも液剤や液体に「フィラー(充填剤)」を混ぜる理由としては、材料の放熱性や導電性を高めるといった目的があり、その意図に応じて金属や合成物質など様々な素材がフィラーに選ばれます。
しかし、例えばフィラー入り樹脂剤を入れているタンクの内部でフィラーが沈降してしまうと、タンク内の上部と下部で樹脂剤の濃度や成分に差が生じてしまう点が重要です。
タンクの上部では、上澄みとしてフィラーが少なく樹脂成分の多い状態となり、底部ではフィラーが濃縮して相対的に樹脂成分が少ない状態となってしまいます。そして当然ながら、上澄み部分を使用するとフィラーの性能が十分に発揮されず、底部を使うと粘度異常による硬化不良やノズルの詰まりといった問題につながります。
微粒子が液体の中を沈む速度は「ストークスの法則」という粒子の運動方程式で算出できますが、これは微粒子の沈降速度は、粒子の大きさや密度、また液剤の密度や粘度によって変化することを意味しています。
つまりフィラーの材質や形状、液体の種類などの条件によって沈降速度が変わるため、沈降防止にはそれぞれの液剤の特性などを適宜考えることが不可欠です。
上述した通り、フィラーが沈降するとタンク内で液剤の中で成分が分離している状態になります。そして上澄み部分ではフィラーが少なくなって液剤の粘度が下がり、また底部ではフィラーの割合が増えて液剤が高粘度化することを避けられません。
2液混合ディスペンサーのような機器では、それぞれの液剤の粘度などに合わせて吐出量や圧力が設定されるため、粘度が不均一になれば必然的に吐出量や塗布量も不安定化し、製品の品質不良につながります。また不良品はそのままロスになるためコストが増大してしまうことも問題です。
フィラーが沈降した状態で放置すると、そのまま底部でフィラーが固まってしまい、ポンプや配管にも塊状態のフィラーが流れ込むリスクが増大します。そうなるとノズルやポンプで詰まりが生じてしまい、吐出量の不安定化や機器の故障、さらには生産ラインの停止といった自体にも発展しかねません。
さらに固まることで硬度が高まったフィラーがポンプ内部のシールやバルブを損耗させて、異常摩耗による機器の故障や破損につながることも考えられます。
フィラーの沈降を防ぐ最も簡単な方法は、タンク内の液剤を攪拌して全体の濃度を常に均一な状態へ保つことです。そのためタンク内にモーター駆動の「撹拌羽根(アジテーター)」を設置するなどして、液剤を常時ゆっくりとかき混ぜてフィラーが一部に偏らないよう対策することが有効です。
なお、攪拌はディスペンサーを使用している時だけでなく、機器や生産ラインが稼働していない時でも維持しなければなりません。
タンク内だけを攪拌装置などで対処しても、タンクからノズルまでの間にある配管内でフィラーが沈降してしまえばトラブルは発生します。
機器の停止や生産ラインの停滞などによって配管内でも液剤の滞留が起きれば、その間にフィラーが沈降する恐れはあります。そのためノズルから液剤が吐出されていない待機中などでも、配管内の液剤を循環させて沈降や固化・固着を防ぐことが肝要です。
特に配管が長い場合や温度変化が大きいような環境において、「液循環システム」による対策は必須といえるでしょう。
そもそもフィラー入り材料は粘度が高く、異なる液剤と均一に混ぜることが難しい難混合剤です。そのため2液混合ディスペンサーを使用する場合も、内部に駆動装置を持っていないスタティックミキサーのようなタイプでは、難混合剤に対して混合不良や閉塞が発生しやすくなります。
難混合剤であるフィラー入り材料を2液混合ディスペンサーで使用する際には、攪拌装置で強制的に液剤を混合できるダイナミックミキサーを搭載したモデルを選択することが重要です。
難混合剤を2液混合ディスペンサーで使用する際にダイナミックミキサーが適しているといっても、例えば攪拌時の回転数が過剰であれば液質が劣化したり、回転数が不足していれば混合不足が生じたりするリスクもあります。
また配管内を循環させるにしても、液剤の循環速度も考慮しなければ生産ラインへ上手く接続できないかも知れません。
フィラー入り材料を2液混合ディスペンサーで使用する場合、それぞれの条件を踏まえて適切な設定や設計が可能な製品を比較検討することが大切です。
フィラー入り樹脂剤の攪拌については、使用されている液剤の種類やフィラーの状態などによって異なります。ただし、一般的には低速から中速の攪拌が必要とされており、高速攪拌では液質の劣化や攪拌部の摩耗などといったリスクにつながるとされています。
具体的な速度や条件については事前にメーカーへ相談することが大切です。
異なる液剤の混合に電力や重力を使用しないスタティックミキサーは、フィラーのない材料や低~中粘度の液剤に適しているとされています。反面、フィラー入り材料や高粘度の液剤についてはしっかりと混合できるダイナミックミキサーが適しています。
攪拌機能や循環機能を備えているディスペンサーシステムを採用すれば、液剤を均一な状態に保ちながら生産ラインへ対応することが可能です。ただし既存設備へ改めて攪拌機能や循環機能を備えた2液混合ディスペンサーを導入・接続するような場合、互換性や適合性などをあらかじめメーカーへ確認しなければなりません。
フィラー入り材料を使用する場合や将来的に難混合剤を使用する可能性がある場合、「吐出量」や「計量精度」といった性能だけでディスペンサーを選ぶことは厳禁です。
フィラー入り材料のような難混合剤では、そもそも同量の液剤でも成分比率が均一でない恐れがあるため、必ず液質を安定的に維持できる仕組みを備えていることが求められます。
そのためフィラー入り材料を使用する場合は、「撹拌機能(アジテーター)」・「循環システム」・「ダイナミックミキサー」という3つの要素を考慮した上でシステムや設備の比較検討を行ってください。
フィラー入り材料に適した2液混合ディスペンサーの比較検討をする際には、実際に想定される材料や環境などを総合的に考慮して機器の選定をすることが大切です。そのため、基本的にはフィラー対応実績のあるメーカーへ問い合わせたり、あらかじめ吐出テストを行ったりといったことが重要になります。
当サイトでは2液混合ディスペンサーを取り扱う企業や特徴をそれぞれ紹介していますので、ぜひ各メーカーの詳細ページをご確認ください。
液体の組み合わせによって必要なスペックが大きく異なる2液混合ディスペンサーだからこそ、使う目的によって装置を選ぶことが第一歩。
そのため、ここでは使用する環境や製造する製品から、適切な2液混合ディスペンサーをご紹介しています。
電子部品など
正確な吐出が必要なら
エイ・エム・ケイ |
大量生産品など
配合比がシンプルなら
ナカリキッドコントロール |
分析機器など
微量吐出を重視するなら
日本ソセー工業 |
|
| 製品名 | マゼダスDタイプ
![]() 引用元:エイ・エム・ケイ公式HP
(https://www.amk-j.co.jp/mazedas/d-type/) |
比率固定式HR-50
![]() 引用元:ナカリキッドコントロール公式HP
(https://www.nlc-dis.co.jp/products/double/hr50.html) |
STP-150
![]() 引用元:日本ソセー工業公式HP
(https://www.sosey.co.jp/product-list/supershot2/stp) |
|---|---|---|---|
吐出精度
液体を吐出する精度を指します。メーカーによって保証値(カタログ上のスペック)と実績値が異なります。また、公表していないメーカーも中にはあります。 |
実績値:±0.1% (※吐出条件、樹脂仕様により要相談) |
高精度 ※詳細記載なし |
保証値:±1% |
混合比率
2液混合ディスペンサーで対応している主剤と硬化剤の割合のことです。主にミキサーとポンプの種類によって混合比率や調整の可否が変わります。 |
100:100~100:1 | 100:100~100:4 | 記載なし |
吐出速度
2液混合ディスペンサーが主剤と硬化剤を吐出するスピードのことです。カタログ上の吐出速度が速いと、ターゲットへスピーディに液体を吐出できます。 |
0.01ml/s~190ml/s | 記載なし | 0.0050ml/s~0.30ml/s |
適応粘度
2液混合ディスペンサーが対応している液体の粘度のことです。カタログと異なる粘度の液体を使用した場合、液だれやノズル詰まりなどを引き起こすおそれがあります。 |
1~100,000mPa・s/25℃ | 1~100,000 mPa・s/25℃ | ~200,000mPa・s |
吐出量
1秒間に吐出できる液体の量を指します。吐出量を細かくコントロールできる装置は精度が高く、製品の品質向上にも寄与します。 |
0.007ml/shot(1秒)~無制限 | 2.5~294 ml/shot | 記載なし |
吐出方式
液体を吐出する方法のことです。2液混合ディスペンサーは、連続的に液体をターゲットへ吐出する連続吐出と、その都度充填・吐出を行う間欠吐出があります。 |
連続吐出/ワンショット吐出/定量吐出/繰返し吐出/他機連動吐出 | 間欠吐出 | タイマー吐出/手動(連続)吐出 |
タンク容量
液体を貯めておくタンクの容量です。製品によって容量が大きく異なります。2液混合ディスペンサーは、主剤・硬化剤それぞれに独立したタンクがあります。 |
各15L・30L・50L・60L・ 80L・100L・200L ※A液・B液タンクの組み合わせは自由 |
20Lオープンタンク (ステンレス製) |
4L耐圧ガラスタンク×2基 |
公式HP
掲載の 対応液体例 2液混合ディスペンサーで利用できる液体の種類です。製品によって対応している液体の種類が異なるため、選定時はしっかり確認する必要があります。 |
記載なし | ||
【選定条件】
Googleで「混合吐出装置」と検索し(2024年5月16日調査時点)検索結果全ぺージに表示された公式HP14社、イプロスの「混合吐出機」ページ掲載企業の計18社を調査。
そのうち、2液混合ディスペンサーを扱う15社の中から、以下の条件で3製品を選定しています。
・マゼダスDタイプ…15社の製品のうち、吐出精度の保証値が±2~3%以内、実績値が±0.5%以内で最も高い2液混合ディスペンサー
・比率固定式HR-50…15社の製品のうち唯一、シンプルな構造により低価格化を実現と記載のある2液混合ディスペンサー
・STP-150…15社の製品のうち、吐出量が最も少ない2液混合ディスペンサー