自動車部品、電子機器、建材など、さまざまな製造現場で接着や封止に広く使用されているエポキシ樹脂。しかし近年、国際情勢の不安定化に伴う「エポキシ樹脂の価格高騰」が深刻化しており、多くの工場で製造コストを激しく圧迫しています。
材料の仕入れ価格そのものをコントロールするのは困難ですが、現場での「使い方の無駄」を無くすことで、高騰分を相殺することは十分に可能です。ここでは、エポキシ樹脂をはじめとする樹脂・接着剤の値上がりの背景と、2液混合ディスペンサーの導入による材料ロス削減、および調達リスクを回避するBCP対策について解説します。
エポキシ樹脂やウレタン樹脂、アクリル樹脂といった産業用液剤の多くは、石油精製プロセスから得られるナフサを主原料としています。中東情勢の緊迫化や地政学リスクの長期化を背景に、原油相場およびナフサ価格が高止まりを続けており、これが樹脂メーカー各社の相次ぐ価格改定(値上げ)の引き金となっています。この状況は一時的なものではなく、今後も不透明な調達環境が続くと見込まれています。
これまでは「多少の材料ロスは仕方のない必要経費」として処理できていた現場でも、現在の価格帯ではその無駄が企業の利益をダイレクトに目減りさせます。外部からの購入価格を下げられない以上、「材料費が上がるなら、現場で捨てる量を極限まで減らすしかない」という抜本的な意識改革と対策が、すべての製造現場に突きつけられています。
工場のコストを削減するためには、まず日々の作業の中にどれだけの「見えない材料ロス」が潜んでいるかを正確に把握する必要があります。
主剤と硬化剤をバケツやカップ等を用いて手作業で計量・混合している現場では、どれだけ注意していてもヒューマンエラーによる配合比のミスが発生します。比率が狂った樹脂は硬化不良を起こすため、すべて廃棄せざるを得ません。また、2液を混ぜ合わせた瞬間から化学反応が始まるため、可使時間(ポットライフ)を過ぎて使い切れずに硬化・廃棄してしまう「塊のロス」も頻発しています。
手動のガンや精度の低い塗布装置を使用している場合、塗布量のばらつきを考慮して「少なすぎて剥がれるよりは、多めに塗っておこう」という心理が働きがちです。この安全マージンとしての過剰塗布や、ノズル先端からの液だれ・糸引きによるワークの汚れは、高価なエポキシ樹脂を毎ショット少しずつ無駄遣いしていることになり、積もり積もって膨大なコストの損失に繋がっています。
こうした手作業や従来の手法が抱えるロスをゼロに近づけるための最も有効な手段が、最新の2液混合ディスペンサーへの切り替えです。
最新の2液混合ディスペンサーは、主剤と硬化剤を吐出する直前まで完全に独立したラインで正確に計量します。材料の特性(粘度や比重)に合わせた精密なギヤポンプやピストンポンプにより、常に均一な配合比で自動吐出するため、計量ミスによる不良品の発生や材料の無駄が一切なくなります。これにより製品の歩留まりが劇的に改善します。
装置のノズル先端には、吐出終了と同時に液をわずかに吸い戻すシャットオフバルブやサックバック機能が搭載されており、液だれや糸引きによる材料のロスを根本からカットします。また、スタティックミキサーの内部など「必要な量だけをその都度混合」して吐出するため、容器内で大量の樹脂が可使時間切れで固まるリスクを完全に排除できます。削減された材料費だけで装置の導入コストを早期に回収できるため、極めて高い投資対効果(ROI)を発揮します。
価格高騰だけでなく、特定メーカーの供給遅延や生産停止に備えるサプライチェーン対策(BCP)としても、ディスペンサーの導入は大きな意味を持ちます。
原材料の調達不安から、急遽「別のメーカーの同等品」や「ウレタン樹脂など別素材」へ切り替えを迫られるケースが増えています。しかし、材料が変われば粘度、比重、そして何より主剤と硬化剤の「適正な配合比」が異なるため、従来の固定式設備や手作業では対応が難しく、ライン移行時に大きな品質トラブルを起こすリスクがあります。
柔軟性の高い最新の2液混合ディスペンサーであれば、タッチパネルなどの設定変更だけで、新しい材料の配合比や吐出スピード、圧力条件に即座に適応させることができます。材料の粘度変化に応じた温度管理機能(ヒーター)を備えたモデルもあり、供給トラブルや価格改定による材料変更があっても、生産ラインを止めることなくスムーズな移行を可能にします。
ナフサ供給不安に伴うエポキシ樹脂の価格高騰は、製造業における利益確保の大きな壁となっています。この時代を生き抜くためには、手作業による計量ミスやポットライフ切れ、過剰塗布といった「現場の材料ロス」を徹底的に排除する仕組み作りが不可欠です。「必要な量だけを都度混合」する高精度な2液混合ディスペンサーの導入は、ダイレクトなコスト削減を可能にするだけでなく、代替材料へのスムーズな移行を支える強力なBCP対策にもなります。これ以上の材料費高騰に現場が圧迫される前に、設備の自動化・高精度化による防衛策を検討しましょう。
液体の組み合わせによって必要なスペックが大きく異なる2液混合ディスペンサーだからこそ、使う目的によって装置を選ぶことが第一歩。
そのため、ここでは使用する環境や製造する製品から、適切な2液混合ディスペンサーをご紹介しています。
電子部品など
正確な吐出が必要なら
エイ・エム・ケイ |
大量生産品など
配合比がシンプルなら
ナカリキッドコントロール |
分析機器など
微量吐出を重視するなら
日本ソセー工業 |
|
| 製品名 | マゼダスDタイプ
![]() 引用元:エイ・エム・ケイ公式HP
(https://www.amk-j.co.jp/mazedas/d-type/) |
比率固定式HR-50
![]() 引用元:ナカリキッドコントロール公式HP
(https://www.nlc-dis.co.jp/products/double/hr50.html) |
STP-150
![]() 引用元:日本ソセー工業公式HP
(https://www.sosey.co.jp/product-list/supershot2/stp) |
|---|---|---|---|
吐出精度
液体を吐出する精度を指します。メーカーによって保証値(カタログ上のスペック)と実績値が異なります。また、公表していないメーカーも中にはあります。 |
実績値:±0.1% (※吐出条件、樹脂仕様により要相談) |
高精度 ※詳細記載なし |
保証値:±1% |
混合比率
2液混合ディスペンサーで対応している主剤と硬化剤の割合のことです。主にミキサーとポンプの種類によって混合比率や調整の可否が変わります。 |
100:100~100:1 | 100:100~100:4 | 記載なし |
吐出速度
2液混合ディスペンサーが主剤と硬化剤を吐出するスピードのことです。カタログ上の吐出速度が速いと、ターゲットへスピーディに液体を吐出できます。 |
0.01ml/s~190ml/s | 記載なし | 0.0050ml/s~0.30ml/s |
適応粘度
2液混合ディスペンサーが対応している液体の粘度のことです。カタログと異なる粘度の液体を使用した場合、液だれやノズル詰まりなどを引き起こすおそれがあります。 |
1~100,000mPa・s/25℃ | 1~100,000 mPa・s/25℃ | ~200,000mPa・s |
吐出量
1秒間に吐出できる液体の量を指します。吐出量を細かくコントロールできる装置は精度が高く、製品の品質向上にも寄与します。 |
0.007ml/shot(1秒)~無制限 | 2.5~294 ml/shot | 記載なし |
吐出方式
液体を吐出する方法のことです。2液混合ディスペンサーは、連続的に液体をターゲットへ吐出する連続吐出と、その都度充填・吐出を行う間欠吐出があります。 |
連続吐出/ワンショット吐出/定量吐出/繰返し吐出/他機連動吐出 | 間欠吐出 | タイマー吐出/手動(連続)吐出 |
タンク容量
液体を貯めておくタンクの容量です。製品によって容量が大きく異なります。2液混合ディスペンサーは、主剤・硬化剤それぞれに独立したタンクがあります。 |
各15L・30L・50L・60L・ 80L・100L・200L ※A液・B液タンクの組み合わせは自由 |
20Lオープンタンク (ステンレス製) |
4L耐圧ガラスタンク×2基 |
公式HP
掲載の 対応液体例 2液混合ディスペンサーで利用できる液体の種類です。製品によって対応している液体の種類が異なるため、選定時はしっかり確認する必要があります。 |
記載なし | ||
【選定条件】
Googleで「混合吐出装置」と検索し(2024年5月16日調査時点)検索結果全ぺージに表示された公式HP14社、イプロスの「混合吐出機」ページ掲載企業の計18社を調査。
そのうち、2液混合ディスペンサーを扱う15社の中から、以下の条件で3製品を選定しています。
・マゼダスDタイプ…15社の製品のうち、吐出精度の保証値が±2~3%以内、実績値が±0.5%以内で最も高い2液混合ディスペンサー
・比率固定式HR-50…15社の製品のうち唯一、シンプルな構造により低価格化を実現と記載のある2液混合ディスペンサー
・STP-150…15社の製品のうち、吐出量が最も少ない2液混合ディスペンサー