スタティックミキサーは、材料の流れをそのまま利用して撹拌したり混合したりできるミキサーのことです。ディスペンサーのユニットとしても広く利用されています。スタティックミキサーは内部がねじれており、均質に撹拌・混合しやすいのがメリット。駆動部がないので省エネにも寄与します。
スタティックミキサーは、液体などが持つ流速を使って材料を混合するミキサーをいいます。独立した駆動部を持っておらず、材料の流れをそのまま利用して均質に混合できるよう設計されています。
このページでは、スタティックミキサーの特徴や原理、メリットなどを詳しく解説します。
スタティックミキサーは、配管内部に固定されたエレメント(羽根・板・螺旋体)を通過させることで流体自身の運動エネルギーを混合に変換します。外部モーターやアジテータを必要とせず、配管差圧のみで層流/乱流域いずれでも高効率に混合を行えるのが最大の特徴です。
代表的なノリタケ型では、直径に対して約1.5D の長さを持つ右巻き・左巻きエレメントを交互に配置します。流体はエレメントを通過するたびに180°ずつ回転しながら二分割され、流路中心部と管壁側が絶えず入れ替わります。これにより温度・濃度・粘度差が短距離で均質化されます。
これらが連続的に重畳し、短い管長でも高い混合指数(MI > 0.95)を達成できます。
層流域(Re < 2100)では層分割と転換が支配的で、粘度が高くても剪断熱は最小限です。一方、乱流域(Re ≧ 2100)では反転作用と乱流拡散が主役となり、短距離で高速混合が可能です。高粘度2液エポキシから低粘度溶剤系までレイノルズ数に応じてエレメント枚数を最適化します。
スタティックミキサーの圧力損失 ΔP は Darcy–Weisbach 式を基礎に、ΔP = K·(ρ·v2/2)
で評価します。K はエレメント形状係数で一般に 50〜300 程度。攪拌タンクに比べ推定が容易で、スケールアップ時はエレメント径を2倍にし流速を半減することで同等の混合品質とΔPを維持できます。
粘度 (mPa·s) | 流量 (L/min) | 管径 (mm) | Re | 推奨エレメント枚数 |
---|---|---|---|---|
1 | 10 | 12 | 4500 | 6 |
1000 | 1 | 20 | 30 | 24 |
5000 | 0.2 | 25 | 8 | 32 |
上表はノリタケ社技術資料を基にした概算です。高粘度域は枚数を増やし分割作用を強化、低粘度域は枚数を減らし圧損を抑制するのがポイントです。
スタティックミキサーには、主に以下のメリットがあります。
特に大きなメリットは、さまざまな材料に適用できる点です。スタティックミキサーは、内部の形状によって混ぜ方が変わるため、材料に合わせて使い分けられるのが特徴。粘度が異なる液体を混合したり、混ぜにくい材料を均質に撹拌したりすることも可能です。
スタティックミキサーは内部に駆動部がないため、ダイナミックミキサーと比較して省エネです。材料の流れをそのまま利用しますので、外部からエネルギーを供給する必要がありません。その分電気などの使用量を抑えられるので、コスト削減にも寄与します。
メンテナンスがしやすいこともメリット。スタティックミキサーは駆動部がないシンプルな構造のため、スピーディにメンテナンスできます。保守運用の手間が減る分、メンテナンスコストの削減も期待できるでしょう。
スタティックミキサーは、材料の流れを利用して混合するシンプルな構造を持ち、駆動部を必要としない省エネ型のミキサーです。配管内の固定エレメントにより流体を分割・転換・反転させ、短距離で均質な混合を実現します。
幅広い材料に対応でき、エネルギー消費を抑えられるのが大きな特長です。構造が簡素なためメンテナンスもしやすく、運用コスト削減にも寄与。効率的かつ安定した混合を求める現場で活用されています。
なお、混合対象や工程条件により適切な方式は異なるため、ダイナミックミキサーとの比較検討が推奨されます。
液体の組み合わせによって必要なスペックが大きく異なる2液混合ディスペンサーだからこそ、使う目的によって装置を選ぶことが第一歩。
そのため、ここでは使用する環境や製造する製品から、適切な2液混合ディスペンサーをご紹介しています。
電子部品など
正確な吐出が必要なら
エイ・エム・ケイ |
大量生産品など
配合比がシンプルなら
ナカリキッドコントロール |
分析機器など
微量吐出を重視するなら
日本ソセー工業 |
|
製品名 | マゼダスDタイプ
![]() 引用元:エイ・エム・ケイ公式HP
(https://www.amk-j.co.jp/mazedas/d-type/) |
比率固定式HR-50
![]() 引用元:ナカリキッドコントロール公式HP
(https://www.nlc-dis.co.jp/products/double/hr50.html) |
STP-150
![]() 引用元:日本ソセー工業公式HP
(https://www.sosey.co.jp/product-list/supershot2/stp) |
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吐出精度
液体を吐出する精度を指します。メーカーによって保証値(カタログ上のスペック)と実績値が異なります。また、公表していないメーカーも中にはあります。 |
実績値:±0.1% (※吐出条件、樹脂仕様により要相談) |
高精度 ※詳細記載なし |
保証値:±1% |
混合比率
2液混合ディスペンサーで対応している主剤と硬化剤の割合のことです。主にミキサーとポンプの種類によって混合比率や調整の可否が変わります。 |
100:100~100:1 | 100:100~100:4 | 記載なし |
吐出速度
2液混合ディスペンサーが主剤と硬化剤を吐出するスピードのことです。カタログ上の吐出速度が速いと、ターゲットへスピーディに液体を吐出できます。 |
0.01ml/s~190ml/s | 記載なし | 0.0050ml/s~0.30ml/s |
適応粘度
2液混合ディスペンサーが対応している液体の粘度のことです。カタログと異なる粘度の液体を使用した場合、液だれやノズル詰まりなどを引き起こすおそれがあります。 |
1~100,000mPa・s/25℃ | 1~100,000 mPa・s/25℃ | ~200,000mPa・s |
吐出量
1秒間に吐出できる液体の量を指します。吐出量を細かくコントロールできる装置は精度が高く、製品の品質向上にも寄与します。 |
0.007ml/shot(1秒)~無制限 | 2.5~294 ml/shot | 記載なし |
吐出方式
液体を吐出する方法のことです。2液混合ディスペンサーは、連続的に液体をターゲットへ吐出する連続吐出と、その都度充填・吐出を行う間欠吐出があります。 |
連続吐出/ワンショット吐出/定量吐出/繰返し吐出/他機連動吐出 | 間欠吐出 | タイマー吐出/手動(連続)吐出 |
タンク容量
液体を貯めておくタンクの容量です。製品によって容量が大きく異なります。2液混合ディスペンサーは、主剤・硬化剤それぞれに独立したタンクがあります。 |
各15L・30L・50L・60L・ 80L・100L・200L ※A液・B液タンクの組み合わせは自由 |
20Lオープンタンク (ステンレス製) |
4L耐圧ガラスタンク×2基 |
公式HP
掲載の 対応液体例 2液混合ディスペンサーで利用できる液体の種類です。製品によって対応している液体の種類が異なるため、選定時はしっかり確認する必要があります。 |
記載なし | ||
【選定条件】
Googleで「混合吐出装置」と検索し(2024年5月16日調査時点)検索結果全ぺージに表示された公式HP14社、イプロスの「混合吐出機」ページ掲載企業の計18社を調査。
そのうち、2液混合ディスペンサーを扱う15社の中から、以下の条件で3製品を選定しています。
・マゼダスDタイプ…15社の製品のうち、吐出精度の保証値が±2~3%以内、実績値が±0.5%以内で最も高い2液混合ディスペンサー
・比率固定式HR-50…15社の製品のうち唯一、シンプルな構造により低価格化を実現と記載のある2液混合ディスペンサー
・STP-150…15社の製品のうち、吐出量が最も少ない2液混合ディスペンサー