化成品とは化学合成を活用して製造する物質や製品であり、化成品の製造には当然ながら多種多様な薬剤や溶剤といったものも使用されます。しかし化学合成は使用する薬品や原料が正しい順序や混合比率で調整・投入されることが前提であり、手作業ではロスや作業の遅延が発生しやすくなる上、製品の均一性についても不安が生じます。
また安定した化学合成を再現するためには熟練者の経験やスキルが重要になることもあり、属人性が高くなってしまいやすいことも課題です。その他にも化成品では万が一に備えて製品管理やプロセス管理を一元化し、トレーサビリティを確保したり品質保証体制を構築したりすることも欠かせません。
化成品におけるこのようなニーズや原則に対して、生産ラインのシステム化やFA化などに適合する2液混合ディスペンサーは、複数の課題をまとめて解決できる可能性のある産業用機器となっています。
株式会社エイ・エム・ケイではクッションソールの弾力性を任意に調整するため、ソールを構成するウレタン剤について主剤と硬化剤の配合比を細かく設定したいというニーズに対応できるよう、2液混合ディスペンサー「MAZEDAS(マゼダス)」を提供しています。これにより混合作業を自動化できる上、細かな配合比の調整についてもシステム管理によって安定させることが叶いました。
参照元:エイ・エム・ケイ公式HP(https://www.amk-j.co.jp/case/case04/)
電子基板を内蔵するケースのモールディングにエポキシ樹脂とウレタン樹脂を使用する工程において、マゼダスが活用されています。
まず、溶剤吐出の後にディスペンサーを洗浄する際、作業場の環境に配慮して洗浄溶剤不使用のシステムが求められました。加えてポンプの軸をシールレスにすることでメンテナンスフリーとなり、簡単かつ安全な洗浄とメンテナンス性の向上によって作業員の負担や工場内の環境リスクが軽減されています。
参照元:エイ・エム・ケイ公式HP(https://www.amk-j.co.jp/case/case01/)
高熱伝導性の二液性放熱ギャップフィラーを使用する化成品メーカーでは、塗布精度のばらつきやモーノポンプ部品の摩耗による頻繁なオーバーホールが課題となっていました。そこで、武蔵エンジニアリングの2液混合ディスペンサーを導入したことで、0.5gといった微少量でも安定した定量塗布が可能に。オーバーホール周期も2ヶ月から6ヶ月へと大幅に延長され、製品品質と生産効率の両面で大きな改善が得られました。
参照元:武蔵エンジニアリング公式HP(https://www.musashi-engineering.co.jp/case/case_a.html)
武蔵エンジニアリングの
2液混合ディスペンサー
について詳しく知る
高粘度の接着剤や薬品を扱う化成品メーカーでは、原料の無駄を減らしつつ安定した吐出精度が求められます。兵神装備のモーノディスペンサーを導入することで、高粘度材料でも残液を抑えた定量吐出が可能となり、シリンジやパックへの高精度な充填が実現しました。製造コストを抑えながら、作業効率と品質の安定化に寄与しています。
参照元:兵神装備公式HP(https://www.mohno-dispenser.jp/casestudies/chemicalindustry/)
化成品の製造業界では多種多様な溶剤や液剤を使用するため、2液混合ディスペンサーの導入メリットを発揮しやすいジャンルといえます。ただしメリットの最大化には注意すべき点もあるため、必要な前提を踏まえて2液混合ディスペンサーの比較検討を行いましょう。
液体の組み合わせによって必要なスペックが大きく異なる2液混合ディスペンサーだからこそ、使う目的によって装置を選ぶことが第一歩。
そのため、ここでは使用する環境や製造する製品から、適切な2液混合ディスペンサーをご紹介しています。
電子部品など
正確な吐出が必要なら
エイ・エム・ケイ |
大量生産品など
配合比がシンプルなら
ナカリキッドコントロール |
分析機器など
微量吐出を重視するなら
日本ソセー工業 |
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製品名 | マゼダスDタイプ
![]() 引用元:エイ・エム・ケイ公式HP
(https://www.amk-j.co.jp/mazedas/d-type/) |
比率固定式HR-50
![]() 引用元:ナカリキッドコントロール公式HP
(https://www.nlc-dis.co.jp/products/double/hr50.html) |
STP-150
![]() 引用元:日本ソセー工業公式HP
(https://www.sosey.co.jp/product-list/supershot2/stp) |
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吐出精度
液体を吐出する精度を指します。メーカーによって保証値(カタログ上のスペック)と実績値が異なります。また、公表していないメーカーも中にはあります。 |
実績値:±0.1% (※吐出条件、樹脂仕様により要相談) |
高精度 ※詳細記載なし |
保証値:±1% |
混合比率
2液混合ディスペンサーで対応している主剤と硬化剤の割合のことです。主にミキサーとポンプの種類によって混合比率や調整の可否が変わります。 |
100:100~100:1 | 100:100~100:4 | 記載なし |
吐出速度
2液混合ディスペンサーが主剤と硬化剤を吐出するスピードのことです。カタログ上の吐出速度が速いと、ターゲットへスピーディに液体を吐出できます。 |
0.01ml/s~190ml/s | 記載なし | 0.0050ml/s~0.30ml/s |
適応粘度
2液混合ディスペンサーが対応している液体の粘度のことです。カタログと異なる粘度の液体を使用した場合、液だれやノズル詰まりなどを引き起こすおそれがあります。 |
1~100,000mPa・s/25℃ | 1~100,000 mPa・s/25℃ | ~200,000mPa・s |
吐出量
1秒間に吐出できる液体の量を指します。吐出量を細かくコントロールできる装置は精度が高く、製品の品質向上にも寄与します。 |
0.007ml/shot(1秒)~無制限 | 2.5~294 ml/shot | 記載なし |
吐出方式
液体を吐出する方法のことです。2液混合ディスペンサーは、連続的に液体をターゲットへ吐出する連続吐出と、その都度充填・吐出を行う間欠吐出があります。 |
連続吐出/ワンショット吐出/定量吐出/繰返し吐出/他機連動吐出 | 間欠吐出 | タイマー吐出/手動(連続)吐出 |
タンク容量
液体を貯めておくタンクの容量です。製品によって容量が大きく異なります。2液混合ディスペンサーは、主剤・硬化剤それぞれに独立したタンクがあります。 |
各15L・30L・50L・60L・ 80L・100L・200L ※A液・B液タンクの組み合わせは自由 |
20Lオープンタンク (ステンレス製) |
4L耐圧ガラスタンク×2基 |
公式HP
掲載の 対応液体例 2液混合ディスペンサーで利用できる液体の種類です。製品によって対応している液体の種類が異なるため、選定時はしっかり確認する必要があります。 |
記載なし | ||
【選定条件】
Googleで「混合吐出装置」と検索し(2024年5月16日調査時点)検索結果全ぺージに表示された公式HP14社、イプロスの「混合吐出機」ページ掲載企業の計18社を調査。
そのうち、2液混合ディスペンサーを扱う15社の中から、以下の条件で3製品を選定しています。
・マゼダスDタイプ…15社の製品のうち、吐出精度の保証値が±2~3%以内、実績値が±0.5%以内で最も高い2液混合ディスペンサー
・比率固定式HR-50…15社の製品のうち唯一、シンプルな構造により低価格化を実現と記載のある2液混合ディスペンサー
・STP-150…15社の製品のうち、吐出量が最も少ない2液混合ディスペンサー