2液混合ディスペンサーとは、異なる液体を機械的に混合し、任意の量や部位で吐出するための産業機器です。
人々の健康と生命に直接的にも間接的にも関与する医療機器の製造では、当然ながら極めて高品質かつ高精度の製造工程や製造機器などが必要とされています。例えば樹脂や接着剤の混合比のズレによる硬化不良や、混合・充填工程での微小気泡や異物混入といった問題は、製品の機能不良や強度低下だけでなく、人命にとっても重大なリスクとなります。
そのため米国FDAや欧州MDRなどの公的機関では、万一にも不良品や製造トラブルが判明した際、リスクや不具合発生状況を正確に追跡できるよう品質検査や品質管理に関する情報の記録・保存を義務づけていますが、一方で手作業が主な現場ではどれだけの製品にリスクがあるのか完全にチェックすることが困難なケースも少なくありません。
このような課題の解決目的に加えて、作業の属人性の解消や作業員の労働災害の防止といった観点からも、熟練の作業員の技術を機械的に再現し、FA化などにも対応できる2液混合ディスペンサーの導入が進められています。
武蔵エンジニアリング株式会社の2液混合ディスペンサーとして、超高速試薬スポッティングシステム「JET SPOTTER」が医療機器システムや医療分野で活躍しています。
同製品はノズルのオートクリーニング機能を搭載しており、多種類の試薬スポッティングを自動化することが可能です。また非接触の滴下によってサンプルのコンタミを防止し、医療分野における安全性向上にも寄与します。
参照元:武蔵エンジニアリング株式会社公式HP(https://www.musashi-engineering.co.jp/blog/movie/a13)
武蔵エンジニアリングの
2液混合ディスペンサー
について詳しく知る
日本省力技術研究所の2液混合ディスペンサーは、医療機器として汎用的な電子体温計の製造工程に導入されています。
感熱部と本体を接着させるためにアルミナ入りの2液性エポキシ樹脂を使用する際、同社の2液混合ディスペンサー「ID-200R・X020」が活躍しており、独自開発のギヤポンプによってワーク内の温度調整をすることで樹脂粘度を適切に管理し、気泡混入を防止してスムーズな混合と吐出を実現できる点が特徴です。
参照元:株式会社日本省力技術研究所公式HP(https://www.dispenser.jp/%E6%9C%AA%E5%88%86%E9%A1%9E/93/?utm_source=chatgpt.com)
日本省力技術研究所の
2液混合ディスペンサー
について詳しく知る
フィルター事業・医療機器業界は医薬品製造業界と並んで、人の健康や生命の安全に直接関与する分野であり、医療機器の製造や活用においても当然に厳密で高精度な作業環境を整えることが前提となります。2液混合ディスペンサーはシステムによって属人性やヒューマンエラーのリスクを軽減しつつ、作業品質を向上させて製品や生産体制の安全性を追求する上でも有用です。
液体の組み合わせによって必要なスペックが大きく異なる2液混合ディスペンサーだからこそ、使う目的によって装置を選ぶことが第一歩。
そのため、ここでは使用する環境や製造する製品から、適切な2液混合ディスペンサーをご紹介しています。
電子部品など
正確な吐出が必要なら
エイ・エム・ケイ |
大量生産品など
配合比がシンプルなら
ナカリキッドコントロール |
分析機器など
微量吐出を重視するなら
日本ソセー工業 |
|
製品名 | マゼダスDタイプ
![]() 引用元:エイ・エム・ケイ公式HP
(https://www.amk-j.co.jp/mazedas/d-type/) |
比率固定式HR-50
![]() 引用元:ナカリキッドコントロール公式HP
(https://www.nlc-dis.co.jp/products/double/hr50.html) |
STP-150
![]() 引用元:日本ソセー工業公式HP
(https://www.sosey.co.jp/product-list/supershot2/stp) |
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吐出精度
液体を吐出する精度を指します。メーカーによって保証値(カタログ上のスペック)と実績値が異なります。また、公表していないメーカーも中にはあります。 |
実績値:±0.1% (※吐出条件、樹脂仕様により要相談) |
高精度 ※詳細記載なし |
保証値:±1% |
混合比率
2液混合ディスペンサーで対応している主剤と硬化剤の割合のことです。主にミキサーとポンプの種類によって混合比率や調整の可否が変わります。 |
100:100~100:1 | 100:100~100:4 | 記載なし |
吐出速度
2液混合ディスペンサーが主剤と硬化剤を吐出するスピードのことです。カタログ上の吐出速度が速いと、ターゲットへスピーディに液体を吐出できます。 |
0.01ml/s~190ml/s | 記載なし | 0.0050ml/s~0.30ml/s |
適応粘度
2液混合ディスペンサーが対応している液体の粘度のことです。カタログと異なる粘度の液体を使用した場合、液だれやノズル詰まりなどを引き起こすおそれがあります。 |
1~100,000mPa・s/25℃ | 1~100,000 mPa・s/25℃ | ~200,000mPa・s |
吐出量
1秒間に吐出できる液体の量を指します。吐出量を細かくコントロールできる装置は精度が高く、製品の品質向上にも寄与します。 |
0.007ml/shot(1秒)~無制限 | 2.5~294 ml/shot | 記載なし |
吐出方式
液体を吐出する方法のことです。2液混合ディスペンサーは、連続的に液体をターゲットへ吐出する連続吐出と、その都度充填・吐出を行う間欠吐出があります。 |
連続吐出/ワンショット吐出/定量吐出/繰返し吐出/他機連動吐出 | 間欠吐出 | タイマー吐出/手動(連続)吐出 |
タンク容量
液体を貯めておくタンクの容量です。製品によって容量が大きく異なります。2液混合ディスペンサーは、主剤・硬化剤それぞれに独立したタンクがあります。 |
各15L・30L・50L・60L・ 80L・100L・200L ※A液・B液タンクの組み合わせは自由 |
20Lオープンタンク (ステンレス製) |
4L耐圧ガラスタンク×2基 |
公式HP
掲載の 対応液体例 2液混合ディスペンサーで利用できる液体の種類です。製品によって対応している液体の種類が異なるため、選定時はしっかり確認する必要があります。 |
記載なし | ||
【選定条件】
Googleで「混合吐出装置」と検索し(2024年5月16日調査時点)検索結果全ぺージに表示された公式HP14社、イプロスの「混合吐出機」ページ掲載企業の計18社を調査。
そのうち、2液混合ディスペンサーを扱う15社の中から、以下の条件で3製品を選定しています。
・マゼダスDタイプ…15社の製品のうち、吐出精度の保証値が±2~3%以内、実績値が±0.5%以内で最も高い2液混合ディスペンサー
・比率固定式HR-50…15社の製品のうち唯一、シンプルな構造により低価格化を実現と記載のある2液混合ディスペンサー
・STP-150…15社の製品のうち、吐出量が最も少ない2液混合ディスペンサー