2液混合ディスペンサーは、2種類の液体を正確に計量・混合・吐出するために多くの現場で利用されています。しかし精密な機構を持つ分、定期的なメンテナンスが不可欠であり、現場担当者の大きな負担となるケースも少なくありません。
ここでは「2液混合ディスペンサー メンテ負荷」に焦点を当て、原因や兆候、放置による影響、解決策までを整理します。
メンテ負荷とは、装置の維持管理に必要な作業や時間が過剰にかかっている状態を指します。具体的には「清掃頻度が高すぎる」「消耗部品の交換サイクルが短い」「停止時間が多く稼働率が下がる」といった症状が現れます。
兆候としては、吐出精度が安定しない、液だれが増える、樹脂や硬化剤が固着しやすくなるなどがあります。
高粘度や速硬化性の樹脂を使用する場合、配管やミキサー内部に液体が固着しやすくなります。これにより清掃に時間がかかり、洗浄溶剤の使用量も増え、結果としてメンテ負荷が大きくなります。
シール、パッキン、ミキシングチューブなどの部品は、液体特性や吐出条件によって摩耗や劣化が早まります。寿命が短いと交換頻度が上がり、そのたびにラインを停止して対応せざるを得ません。
装置設計の段階でメンテナンス性が十分考慮されていない場合、分解や組立が煩雑になり作業時間が長引きます。特に海外製の一部装置では、工具が特殊で作業者に負担が集中するケースもあります。
メンテ負荷を軽視すると、最終的には装置トラブルの頻発や生産効率の低下につながります。吐出精度が乱れた状態で運転を続ければ、製品の不良率が上がり品質問題が発生します。
また、突発的な停止が増え、生産ライン全体に影響が及ぶ可能性も高まります。さらに、緊急修理のためのコストが膨らみ、ランニングコストが想定以上に増加するリスクもあります。
この5項目を確認するだけでも、メンテ負荷が異常に高まっているかどうかを早期に察知できます。
メンテ負荷を軽減するためには、複数の観点から取り組む必要があります。
近年は自動洗浄機能を備えた2液混合ディスペンサーも登場しています。稼働終了時に洗浄モードを実行することで、残液の固着を防ぎ作業者の負担を大幅に減らせます。
摩耗が激しい部品を高耐久素材に切り替えることで、交換サイクルを延長できます。また、メーカーによっては高寿命仕様のシールやミキサーを選択できる場合もあるため、仕様変更を検討すると効果的です。
新規導入やリプレイスを検討する際には、吐出精度や速度だけでなく「分解清掃のしやすさ」「工具不要で交換可能な部位の有無」といった点も評価基準に加えることが重要です。
メーカーや代理店の契約保守を活用すれば、専門技術者による定期点検や予防交換が実施されます。これにより現場担当者の作業時間を削減し、安定稼働を実現できます。
2液混合ディスペンサーのメンテ負荷は、装置の特性や液体の性質、設計思想によって大きく左右されます。負荷が高い状態を放置すれば、生産ライン全体の効率低下や品質不良につながり、最終的にはコスト増大という結果を招きます。
早期の兆候把握と予防的な対応が何より重要です。点検チェックリストを運用し、装置のメンテ性を見極めたうえで改善策を講じれば、現場の負担は確実に軽減できます。今後の設備投資やリプレイス時には、メンテナンス性も重要な選定基準として考慮していくことが成功への近道です。
液体の組み合わせによって必要なスペックが大きく異なる2液混合ディスペンサーだからこそ、使う目的によって装置を選ぶことが第一歩。
そのため、ここでは使用する環境や製造する製品から、適切な2液混合ディスペンサーをご紹介しています。
電子部品など
正確な吐出が必要なら
エイ・エム・ケイ |
大量生産品など
配合比がシンプルなら
ナカリキッドコントロール |
分析機器など
微量吐出を重視するなら
日本ソセー工業 |
|
製品名 | マゼダスDタイプ
![]() 引用元:エイ・エム・ケイ公式HP
(https://www.amk-j.co.jp/mazedas/d-type/) |
比率固定式HR-50
![]() 引用元:ナカリキッドコントロール公式HP
(https://www.nlc-dis.co.jp/products/double/hr50.html) |
STP-150
![]() 引用元:日本ソセー工業公式HP
(https://www.sosey.co.jp/product-list/supershot2/stp) |
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吐出精度
液体を吐出する精度を指します。メーカーによって保証値(カタログ上のスペック)と実績値が異なります。また、公表していないメーカーも中にはあります。 |
実績値:±0.1% (※吐出条件、樹脂仕様により要相談) |
高精度 ※詳細記載なし |
保証値:±1% |
混合比率
2液混合ディスペンサーで対応している主剤と硬化剤の割合のことです。主にミキサーとポンプの種類によって混合比率や調整の可否が変わります。 |
100:100~100:1 | 100:100~100:4 | 記載なし |
吐出速度
2液混合ディスペンサーが主剤と硬化剤を吐出するスピードのことです。カタログ上の吐出速度が速いと、ターゲットへスピーディに液体を吐出できます。 |
0.01ml/s~190ml/s | 記載なし | 0.0050ml/s~0.30ml/s |
適応粘度
2液混合ディスペンサーが対応している液体の粘度のことです。カタログと異なる粘度の液体を使用した場合、液だれやノズル詰まりなどを引き起こすおそれがあります。 |
1~100,000mPa・s/25℃ | 1~100,000 mPa・s/25℃ | ~200,000mPa・s |
吐出量
1秒間に吐出できる液体の量を指します。吐出量を細かくコントロールできる装置は精度が高く、製品の品質向上にも寄与します。 |
0.007ml/shot(1秒)~無制限 | 2.5~294 ml/shot | 記載なし |
吐出方式
液体を吐出する方法のことです。2液混合ディスペンサーは、連続的に液体をターゲットへ吐出する連続吐出と、その都度充填・吐出を行う間欠吐出があります。 |
連続吐出/ワンショット吐出/定量吐出/繰返し吐出/他機連動吐出 | 間欠吐出 | タイマー吐出/手動(連続)吐出 |
タンク容量
液体を貯めておくタンクの容量です。製品によって容量が大きく異なります。2液混合ディスペンサーは、主剤・硬化剤それぞれに独立したタンクがあります。 |
各15L・30L・50L・60L・ 80L・100L・200L ※A液・B液タンクの組み合わせは自由 |
20Lオープンタンク (ステンレス製) |
4L耐圧ガラスタンク×2基 |
公式HP
掲載の 対応液体例 2液混合ディスペンサーで利用できる液体の種類です。製品によって対応している液体の種類が異なるため、選定時はしっかり確認する必要があります。 |
記載なし | ||
【選定条件】
Googleで「混合吐出装置」と検索し(2024年5月16日調査時点)検索結果全ぺージに表示された公式HP14社、イプロスの「混合吐出機」ページ掲載企業の計18社を調査。
そのうち、2液混合ディスペンサーを扱う15社の中から、以下の条件で3製品を選定しています。
・マゼダスDタイプ…15社の製品のうち、吐出精度の保証値が±2~3%以内、実績値が±0.5%以内で最も高い2液混合ディスペンサー
・比率固定式HR-50…15社の製品のうち唯一、シンプルな構造により低価格化を実現と記載のある2液混合ディスペンサー
・STP-150…15社の製品のうち、吐出量が最も少ない2液混合ディスペンサー