近年の製造現場では、2液混合ディスペンサーをロボットや搬送装置と連動させ、自動化ラインの一部として稼働させるケースが増えています。しかし、便利さと効率向上の一方で、想定外の自動化トラブルが生じ、生産に影響を与えることがあります。
本稿では、2液混合ディスペンサーにおける自動化トラブルの症状や原因、放置によるリスク、現場でのチェック項目、具体的な解決策を詳しく解説します。
自動化トラブルとは、ディスペンサーが他の自動機や制御システムとうまく連携できず、予定どおりの動作ができなくなる現象です。症状としては「ロボットとの動作タイミングが合わない」「ワーク搬送位置と吐出位置がずれる」「制御信号が途切れて停止する」などが見られます。
兆候としては、タクトが徐々に乱れたり、制御画面にエラーが頻出したり、稼働ログに異常値が残るケースが挙げられます。
PLCや外部制御との信号が正しく同期していないと、吐出タイミングがずれ、停止やエラーを引き起こします。通信規格の違いや設定ミスが典型的な要因です。
ロボットや搬送装置との位置調整が不十分な場合、ワークと吐出位置が一致せず、自動化が成立しなくなります。機械設置後の微妙な振動や経年劣化でも発生することがあります。
ワークの有無や位置を検知するセンサーが汚れや劣化で誤動作すると、自動化シーケンスが途切れます。カメラを使う場合も照明環境やレンズ汚れで認識率が低下することがあります。
自動化トラブルを放置すると、生産ライン全体が頻繁に停止し、稼働率が大幅に低下します。特に自動化ラインは複数工程が連動しているため、1台のトラブルが全体を止めるボトルネックになります。さらに、オペレーターが介入して手作業で補う状況が続くと、生産効率の低下や品質ばらつきの増加につながり、投資した自動化の効果が損なわれます。
これらを確認することで、原因の切り分けと早期復旧がスムーズになります。
自動化トラブルへの対策は、制御系の安定化と設備間の調和を意識した取り組みが重要です。
使用する制御信号や通信規格を統一し、設定を見直すことで同期不良を防げます。メーカー推奨の接続方法やPLCプログラムの確認も有効です。
ディスペンサーとロボットの位置関係を定期的にキャリブレーションすることで、位置ずれを防止できます。特に長時間稼働させる場合は定期点検を必須とすべきです。
検知精度を維持するために、センサー清掃やカメラの光学条件の調整を習慣化します。環境光や粉塵の影響を受けにくい仕様を選定することも効果的です。
重要工程ではセンサーを二重化する、異常時にはオペレーターが簡単に切替できる仕組みを用意するなど、バックアップ体制を整えることでリスクを軽減できます。
2液混合ディスペンサーの自動化トラブルは、制御信号の不一致、機械間の位置ずれ、センサー誤検知といった要因から発生します。これを放置すれば、ライン停止や品質ばらつきに直結し、投資した自動化の価値が失われます。
制御の標準化・位置調整・センサー安定化・冗長化といった対策を講じることで、自動化トラブルのリスクを大幅に軽減できます。早期の兆候に気づき、迅速に手を打つことが安定した自動化ラインの運用には欠かせません。
液体の組み合わせによって必要なスペックが大きく異なる2液混合ディスペンサーだからこそ、使う目的によって装置を選ぶことが第一歩。
そのため、ここでは使用する環境や製造する製品から、適切な2液混合ディスペンサーをご紹介しています。
電子部品など
正確な吐出が必要なら
エイ・エム・ケイ |
大量生産品など
配合比がシンプルなら
ナカリキッドコントロール |
分析機器など
微量吐出を重視するなら
日本ソセー工業 |
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製品名 | マゼダスDタイプ
![]() 引用元:エイ・エム・ケイ公式HP
(https://www.amk-j.co.jp/mazedas/d-type/) |
比率固定式HR-50
![]() 引用元:ナカリキッドコントロール公式HP
(https://www.nlc-dis.co.jp/products/double/hr50.html) |
STP-150
![]() 引用元:日本ソセー工業公式HP
(https://www.sosey.co.jp/product-list/supershot2/stp) |
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吐出精度
液体を吐出する精度を指します。メーカーによって保証値(カタログ上のスペック)と実績値が異なります。また、公表していないメーカーも中にはあります。 |
実績値:±0.1% (※吐出条件、樹脂仕様により要相談) |
高精度 ※詳細記載なし |
保証値:±1% |
混合比率
2液混合ディスペンサーで対応している主剤と硬化剤の割合のことです。主にミキサーとポンプの種類によって混合比率や調整の可否が変わります。 |
100:100~100:1 | 100:100~100:4 | 記載なし |
吐出速度
2液混合ディスペンサーが主剤と硬化剤を吐出するスピードのことです。カタログ上の吐出速度が速いと、ターゲットへスピーディに液体を吐出できます。 |
0.01ml/s~190ml/s | 記載なし | 0.0050ml/s~0.30ml/s |
適応粘度
2液混合ディスペンサーが対応している液体の粘度のことです。カタログと異なる粘度の液体を使用した場合、液だれやノズル詰まりなどを引き起こすおそれがあります。 |
1~100,000mPa・s/25℃ | 1~100,000 mPa・s/25℃ | ~200,000mPa・s |
吐出量
1秒間に吐出できる液体の量を指します。吐出量を細かくコントロールできる装置は精度が高く、製品の品質向上にも寄与します。 |
0.007ml/shot(1秒)~無制限 | 2.5~294 ml/shot | 記載なし |
吐出方式
液体を吐出する方法のことです。2液混合ディスペンサーは、連続的に液体をターゲットへ吐出する連続吐出と、その都度充填・吐出を行う間欠吐出があります。 |
連続吐出/ワンショット吐出/定量吐出/繰返し吐出/他機連動吐出 | 間欠吐出 | タイマー吐出/手動(連続)吐出 |
タンク容量
液体を貯めておくタンクの容量です。製品によって容量が大きく異なります。2液混合ディスペンサーは、主剤・硬化剤それぞれに独立したタンクがあります。 |
各15L・30L・50L・60L・ 80L・100L・200L ※A液・B液タンクの組み合わせは自由 |
20Lオープンタンク (ステンレス製) |
4L耐圧ガラスタンク×2基 |
公式HP
掲載の 対応液体例 2液混合ディスペンサーで利用できる液体の種類です。製品によって対応している液体の種類が異なるため、選定時はしっかり確認する必要があります。 |
記載なし | ||
【選定条件】
Googleで「混合吐出装置」と検索し(2024年5月16日調査時点)検索結果全ぺージに表示された公式HP14社、イプロスの「混合吐出機」ページ掲載企業の計18社を調査。
そのうち、2液混合ディスペンサーを扱う15社の中から、以下の条件で3製品を選定しています。
・マゼダスDタイプ…15社の製品のうち、吐出精度の保証値が±2~3%以内、実績値が±0.5%以内で最も高い2液混合ディスペンサー
・比率固定式HR-50…15社の製品のうち唯一、シンプルな構造により低価格化を実現と記載のある2液混合ディスペンサー
・STP-150…15社の製品のうち、吐出量が最も少ない2液混合ディスペンサー