2液混合ディスペンサーは、建材や自動車、電子機器など幅広い分野で利用されています。しかし、樹脂や硬化剤に含まれる有機溶剤は揮発性有機化合物(VOC)として大気中に放出され、環境規制の対象となります。各国でVOC規制が強化される中、現場では「装置選定や運用にどう対応すべきか」という課題が浮上しています。
このページでは、2液混合ディスペンサーにおけるVOC規制対応について、発生する症状やリスク、原因、現場での確認項目、そして実践的な解決策を解説します。
VOC規制対応とは、揮発性有機化合物を含む材料を使用する際に、その排出量を抑制し環境基準を満たすための取り組みです。症状としては「揮発成分による作業環境の悪化」「工場排気の規制超過」「従業員の健康リスク増大」が挙げられます。
兆候としては、作業エリアで刺激臭が強まる、排気処理装置のフィルタ交換頻度が増える、定期測定で基準値ギリギリの値が出るなどがあります。
エポキシやウレタン系樹脂の一部は有機溶剤を含むため、吐出時や硬化過程でVOCが発生します。材料選定によって排出量が大きく変動します。
作業環境の温度や換気が不十分な場合、揮発が室内に滞留しやすくなります。これにより作業員の健康リスクや排出基準超過が起こりやすくなります。
活性炭フィルタや燃焼処理装置が適切に運用されていない、またはメンテナンス不足の場合、VOCを十分に除去できません。結果として排気規制に抵触する恐れがあります。
VOC規制を無視した運用は、環境法令違反として行政処分や罰則につながります。最悪の場合、操業停止や取引先からの取引停止といった重大リスクを招きます。また、作業環境が悪化することで従業員の体調不良や離職リスクが増加し、労務問題にも発展します。さらに、企業の環境対応力が不十分だと評価されれば、ブランド価値や顧客からの信頼にも影響します。
これらを定期的に確認すれば、VOC規制違反のリスクを大幅に減らせます。
VOC規制対応は、単に換気を強化するだけでなく、材料・装置・運用のすべてにおいて取り組みが必要です。
水性樹脂や低VOCタイプのエポキシ樹脂を使用することで、発生源を抑えることが可能です。材料メーカーの最新ラインナップを確認することが重要です。
密閉度の高いディスペンサーを導入することで、揮発ガスが作業環境に漏れ出すのを防ぎます。特に密閉タンクと密閉配管の採用が有効です。
活性炭吸着や触媒燃焼、スクラバーなど、排気処理設備を導入・強化することでVOC除去率を高められます。フィルタ交換や装置稼働率のチェックも欠かせません。
VOC濃度の定期測定とデータ保存は、コンプライアンスの基本です。異常があればすぐに改善し、行政への報告義務に備えて履歴を残すことが大切です。
2液混合ディスペンサーのVOC規制対応は、単なる環境対策にとどまらず、企業の持続可能性やブランド価値を左右する重要なテーマです。放置すれば、法令違反や操業停止といった重大リスクを招きかねません。
低VOC材料の採用・密閉構造の装置導入・排気処理強化・定期測定を実施すれば、環境規制に対応しつつ安定した生産を継続できます。早期の取り組みが、将来の企業リスクを減らす最善の方法です。
液体の組み合わせによって必要なスペックが大きく異なる2液混合ディスペンサーだからこそ、使う目的によって装置を選ぶことが第一歩。
そのため、ここでは使用する環境や製造する製品から、適切な2液混合ディスペンサーをご紹介しています。
電子部品など
正確な吐出が必要なら
エイ・エム・ケイ |
大量生産品など
配合比がシンプルなら
ナカリキッドコントロール |
分析機器など
微量吐出を重視するなら
日本ソセー工業 |
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製品名 | マゼダスDタイプ
![]() 引用元:エイ・エム・ケイ公式HP
(https://www.amk-j.co.jp/mazedas/d-type/) |
比率固定式HR-50
![]() 引用元:ナカリキッドコントロール公式HP
(https://www.nlc-dis.co.jp/products/double/hr50.html) |
STP-150
![]() 引用元:日本ソセー工業公式HP
(https://www.sosey.co.jp/product-list/supershot2/stp) |
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吐出精度
液体を吐出する精度を指します。メーカーによって保証値(カタログ上のスペック)と実績値が異なります。また、公表していないメーカーも中にはあります。 |
実績値:±0.1% (※吐出条件、樹脂仕様により要相談) |
高精度 ※詳細記載なし |
保証値:±1% |
混合比率
2液混合ディスペンサーで対応している主剤と硬化剤の割合のことです。主にミキサーとポンプの種類によって混合比率や調整の可否が変わります。 |
100:100~100:1 | 100:100~100:4 | 記載なし |
吐出速度
2液混合ディスペンサーが主剤と硬化剤を吐出するスピードのことです。カタログ上の吐出速度が速いと、ターゲットへスピーディに液体を吐出できます。 |
0.01ml/s~190ml/s | 記載なし | 0.0050ml/s~0.30ml/s |
適応粘度
2液混合ディスペンサーが対応している液体の粘度のことです。カタログと異なる粘度の液体を使用した場合、液だれやノズル詰まりなどを引き起こすおそれがあります。 |
1~100,000mPa・s/25℃ | 1~100,000 mPa・s/25℃ | ~200,000mPa・s |
吐出量
1秒間に吐出できる液体の量を指します。吐出量を細かくコントロールできる装置は精度が高く、製品の品質向上にも寄与します。 |
0.007ml/shot(1秒)~無制限 | 2.5~294 ml/shot | 記載なし |
吐出方式
液体を吐出する方法のことです。2液混合ディスペンサーは、連続的に液体をターゲットへ吐出する連続吐出と、その都度充填・吐出を行う間欠吐出があります。 |
連続吐出/ワンショット吐出/定量吐出/繰返し吐出/他機連動吐出 | 間欠吐出 | タイマー吐出/手動(連続)吐出 |
タンク容量
液体を貯めておくタンクの容量です。製品によって容量が大きく異なります。2液混合ディスペンサーは、主剤・硬化剤それぞれに独立したタンクがあります。 |
各15L・30L・50L・60L・ 80L・100L・200L ※A液・B液タンクの組み合わせは自由 |
20Lオープンタンク (ステンレス製) |
4L耐圧ガラスタンク×2基 |
公式HP
掲載の 対応液体例 2液混合ディスペンサーで利用できる液体の種類です。製品によって対応している液体の種類が異なるため、選定時はしっかり確認する必要があります。 |
記載なし | ||
【選定条件】
Googleで「混合吐出装置」と検索し(2024年5月16日調査時点)検索結果全ぺージに表示された公式HP14社、イプロスの「混合吐出機」ページ掲載企業の計18社を調査。
そのうち、2液混合ディスペンサーを扱う15社の中から、以下の条件で3製品を選定しています。
・マゼダスDタイプ…15社の製品のうち、吐出精度の保証値が±2~3%以内、実績値が±0.5%以内で最も高い2液混合ディスペンサー
・比率固定式HR-50…15社の製品のうち唯一、シンプルな構造により低価格化を実現と記載のある2液混合ディスペンサー
・STP-150…15社の製品のうち、吐出量が最も少ない2液混合ディスペンサー