2液混合ディスペンサーは、ポンプやシール、ノズル、ミキシングチューブなど複数の精密部品で構成されており、その一部が供給停止になるだけで生産ライン全体が影響を受けます。昨今は国際的なサプライチェーンの混乱やメーカー都合による部品製造終了もあり、突然の部品供給停止が現場に大きなリスクをもたらしています。
ここでは、2液混合ディスペンサーの部品供給停止について、兆候や原因、放置した場合の影響、現場で確認すべきこと、そして実践的な解決策を解説します。
部品供給停止とは、必要な消耗部品や交換部品がメーカーや代理店から入手できなくなる状態を指します。症状としては「納期回答が長期化する」「受注不可の通知が届く」「公式に製造中止が発表される」といったケースが見られます。
兆候としては、特定の部品価格が急激に上がる、納期が徐々に延びている、代理店から代替品を提案され始めるなどがあります。
需要減少や技術更新により、特定部品の製造が終了することがあります。特に旧モデル向けの部品はサポート期間終了とともに供給が打ち切られることが多いです。
海外からの輸入依存度が高い部品は、物流の混乱や為替変動、国際情勢の影響で安定供給が困難になります。特に半導体や精密シールは世界的な需給バランスに左右されやすい分野です。
環境規制や材料規制により、従来使用されていた樹脂や金属部材が製造できなくなり、部品が市場から消えるケースもあります。これにより強制的に新仕様への切り替えが求められることもあります。
部品供給停止を放置すると、消耗品の寿命切れや故障時に修理が不可能となり、装置を稼働できなくなる事態に直結します。ライン停止が長期化すれば、生産計画全体が崩れ、取引先への納期遅延や契約違反につながるリスクがあります。さらに、強制的に装置更新が必要になり、想定外の設備投資コストが発生する場合もあります。
これらを整理することで、供給停止リスクを早期に察知でき、緊急時の備えになります。
部品供給停止のリスクを完全に避けることは難しいですが、準備次第で被害を最小限に抑えることが可能です。
使用頻度が高い消耗部品は一定量を常時保管しておくことが有効です。特にシール、ノズル、チューブなどは短期で摩耗するため、多めの在庫を確保しておくことで緊急停止を防げます。
メーカー純正品がなくても、互換性のある部品やサードパーティ製部品が存在する場合があります。信頼性や保証範囲を確認しつつ、導入検討を進めることが重要です。
一社に依存するのではなく、複数の代理店や海外ルートを確保することで、供給停止リスクを分散できます。場合によっては海外メーカーから直接仕入れるルートを開拓するのも有効です。
旧型ディスペンサーを長期間使い続けるよりも、供給停止リスクが顕在化した時点で新機種へのリプレイスを検討する方が、長期的に安定稼働を確保できます。
2液混合ディスペンサーにおける部品供給停止は、生産ラインに直結する重大なリスクです。発生原因はメーカー都合、国際的な供給網の混乱、規制強化など多岐にわたりますが、放置すれば操業停止や高額なリプレイスコストを招きます。
予備在庫の確保・代替部品の検討・複数サプライヤーとの取引・早期リプレイスといった対策を講じることで、供給停止リスクを軽減し、安定した生産活動を維持できます。現場では小さな兆候を見逃さず、事前準備を徹底することが何より重要です。
液体の組み合わせによって必要なスペックが大きく異なる2液混合ディスペンサーだからこそ、使う目的によって装置を選ぶことが第一歩。
そのため、ここでは使用する環境や製造する製品から、適切な2液混合ディスペンサーをご紹介しています。
電子部品など
正確な吐出が必要なら
エイ・エム・ケイ |
大量生産品など
配合比がシンプルなら
ナカリキッドコントロール |
分析機器など
微量吐出を重視するなら
日本ソセー工業 |
|
製品名 | マゼダスDタイプ
![]() 引用元:エイ・エム・ケイ公式HP
(https://www.amk-j.co.jp/mazedas/d-type/) |
比率固定式HR-50
![]() 引用元:ナカリキッドコントロール公式HP
(https://www.nlc-dis.co.jp/products/double/hr50.html) |
STP-150
![]() 引用元:日本ソセー工業公式HP
(https://www.sosey.co.jp/product-list/supershot2/stp) |
---|---|---|---|
吐出精度
液体を吐出する精度を指します。メーカーによって保証値(カタログ上のスペック)と実績値が異なります。また、公表していないメーカーも中にはあります。 |
実績値:±0.1% (※吐出条件、樹脂仕様により要相談) |
高精度 ※詳細記載なし |
保証値:±1% |
混合比率
2液混合ディスペンサーで対応している主剤と硬化剤の割合のことです。主にミキサーとポンプの種類によって混合比率や調整の可否が変わります。 |
100:100~100:1 | 100:100~100:4 | 記載なし |
吐出速度
2液混合ディスペンサーが主剤と硬化剤を吐出するスピードのことです。カタログ上の吐出速度が速いと、ターゲットへスピーディに液体を吐出できます。 |
0.01ml/s~190ml/s | 記載なし | 0.0050ml/s~0.30ml/s |
適応粘度
2液混合ディスペンサーが対応している液体の粘度のことです。カタログと異なる粘度の液体を使用した場合、液だれやノズル詰まりなどを引き起こすおそれがあります。 |
1~100,000mPa・s/25℃ | 1~100,000 mPa・s/25℃ | ~200,000mPa・s |
吐出量
1秒間に吐出できる液体の量を指します。吐出量を細かくコントロールできる装置は精度が高く、製品の品質向上にも寄与します。 |
0.007ml/shot(1秒)~無制限 | 2.5~294 ml/shot | 記載なし |
吐出方式
液体を吐出する方法のことです。2液混合ディスペンサーは、連続的に液体をターゲットへ吐出する連続吐出と、その都度充填・吐出を行う間欠吐出があります。 |
連続吐出/ワンショット吐出/定量吐出/繰返し吐出/他機連動吐出 | 間欠吐出 | タイマー吐出/手動(連続)吐出 |
タンク容量
液体を貯めておくタンクの容量です。製品によって容量が大きく異なります。2液混合ディスペンサーは、主剤・硬化剤それぞれに独立したタンクがあります。 |
各15L・30L・50L・60L・ 80L・100L・200L ※A液・B液タンクの組み合わせは自由 |
20Lオープンタンク (ステンレス製) |
4L耐圧ガラスタンク×2基 |
公式HP
掲載の 対応液体例 2液混合ディスペンサーで利用できる液体の種類です。製品によって対応している液体の種類が異なるため、選定時はしっかり確認する必要があります。 |
記載なし | ||
【選定条件】
Googleで「混合吐出装置」と検索し(2024年5月16日調査時点)検索結果全ぺージに表示された公式HP14社、イプロスの「混合吐出機」ページ掲載企業の計18社を調査。
そのうち、2液混合ディスペンサーを扱う15社の中から、以下の条件で3製品を選定しています。
・マゼダスDタイプ…15社の製品のうち、吐出精度の保証値が±2~3%以内、実績値が±0.5%以内で最も高い2液混合ディスペンサー
・比率固定式HR-50…15社の製品のうち唯一、シンプルな構造により低価格化を実現と記載のある2液混合ディスペンサー
・STP-150…15社の製品のうち、吐出量が最も少ない2液混合ディスペンサー