大型施設などにおける大量生産の体制構築を目的として2液混合ディスペンサーを導入する場合、何よりも混合から塗布作業のスピードや効率といった繰り返し作業における生産性(高速タクト)が重要です。むしろ2液混合ディスペンサーの作業効率や作業速度が遅い場合、その部分がラインを停滞させて全体の量産効率が悪化する恐れもあります。
生産ラインの自動化やFA化において、作業の属人性の解消も重要な課題です。
2液混合ディスペンサーを使用する際に、熟練者でなくとも適切な条件設定や環境構築さえ整えば、同じ品質・同じ効率で製造を行えることが大切となります。
大型化・量産化に対応する2液混合ディスペンサーといっても、どのようなタイプが適しているのか条件や環境に合わせて内容を考慮しなければなりません。
高速タクト追求型は、液剤の充填から混合、塗布、洗浄といった一連の作業を高速化して、作業効率を高めているタイプです。それぞれの制御はデジタルシステムによって管理されており、精密な作業や複数種類の混合剤を扱う場合でも高速かつ正確に行えるため、安定した量産体制を叶えられます。
正確な塗布だけでなく、混合工程そのものの品質を向上させるタイプもあります。
2液性樹脂を使用する場合、混合時の気泡発生によって品質低下を誘発されることは少なくありません。しかし液剤の充填や混合、注入といった一連の作業を真空室内で行い、気泡の発生を物理的に抑えるタイプであれば、そもそも気泡リスクを解消するため高品質化に貢献します。
2液混合ディスペンサーを量産システムに組み込む場合、必然的に液剤の混合や塗布といった作業が常に正確性や安定性を保たなければなりません。また製品や条件に合わせて液剤の種類や配合比・混合比が変わる場合も、自動的に調整して最適化されることが求められます。
どれほどシステムで適切に管理していても、思いがけない不具合や不良が発生するリスクはあります。そのような際に、速やかに不良を検知するシステムは被害拡大の防止に不可欠です。また後から不良が発覚した際に、どの時点の、どのポイントで問題が発生したのか追跡できるようトレーサビリティ機能も欠かせません。
量産体制を整えるにあたり、どの程度の生産量やタクトタイムを求めるのか、あらかじめ適切なシミュレーションや計算を行うことが必要です。
塗布作業などに求める品質の許容範囲を設定することも重要です。例えばある程度の気泡はOKとするのか、絶対に気泡を許容しないのか、といった条件でも求められる性能レベルは変化します。例えば気泡が絶対NGの場合、大型真空注型を検討する必要があるでしょう。
品質管理の体制やトレーサビリティシステムの環境など、製造現場やプロジェクトの条件によって適切な条件を考えることも大切です。特に品質マネジメントの国際認証としてISOを取得したり、納品後に取引先でも監査や品質検査が改めて行われたりする場合、それぞれの要件に準拠した2液混合ディスペンサーや生産システムを構築しなければなりません。
大型・量産ラインへ2液混合ディスペンサーを導入する場合、生産ラインの全体でシステム構築や機器の設計を行うことが肝要です。特に前後のロボットシステムや自動化機器などとの連携や互換性は無視することができません。
2液混合ディスペンサーは生産現場の大型化や量産体制の環境構築に大きく貢献する産業機器です。しかし大型・量産ラインのために2液混合ディスペンサーを導入する場合、不良品が量産されないよう安定した作業品質の維持や既存設備との互換性といった課題もあり、自社がどのような目的や条件で2液混合ディスペンサーを導入するのか最初に考えなければなりません。
当サイトでは様々な2液混合ディスペンサーの解説や紹介を行っていますので、ぜひ比較検討の参考としてご活用ください。
液体の組み合わせによって必要なスペックが大きく異なる2液混合ディスペンサーだからこそ、使う目的によって装置を選ぶことが第一歩。
そのため、ここでは使用する環境や製造する製品から、適切な2液混合ディスペンサーをご紹介しています。
電子部品など
正確な吐出が必要なら
エイ・エム・ケイ |
大量生産品など
配合比がシンプルなら
ナカリキッドコントロール |
分析機器など
微量吐出を重視するなら
日本ソセー工業 |
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製品名 | マゼダスDタイプ
![]() 引用元:エイ・エム・ケイ公式HP
(https://www.amk-j.co.jp/mazedas/d-type/) |
比率固定式HR-50
![]() 引用元:ナカリキッドコントロール公式HP
(https://www.nlc-dis.co.jp/products/double/hr50.html) |
STP-150
![]() 引用元:日本ソセー工業公式HP
(https://www.sosey.co.jp/product-list/supershot2/stp) |
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吐出精度
液体を吐出する精度を指します。メーカーによって保証値(カタログ上のスペック)と実績値が異なります。また、公表していないメーカーも中にはあります。 |
実績値:±0.1% (※吐出条件、樹脂仕様により要相談) |
高精度 ※詳細記載なし |
保証値:±1% |
混合比率
2液混合ディスペンサーで対応している主剤と硬化剤の割合のことです。主にミキサーとポンプの種類によって混合比率や調整の可否が変わります。 |
100:100~100:1 | 100:100~100:4 | 記載なし |
吐出速度
2液混合ディスペンサーが主剤と硬化剤を吐出するスピードのことです。カタログ上の吐出速度が速いと、ターゲットへスピーディに液体を吐出できます。 |
0.01ml/s~190ml/s | 記載なし | 0.0050ml/s~0.30ml/s |
適応粘度
2液混合ディスペンサーが対応している液体の粘度のことです。カタログと異なる粘度の液体を使用した場合、液だれやノズル詰まりなどを引き起こすおそれがあります。 |
1~100,000mPa・s/25℃ | 1~100,000 mPa・s/25℃ | ~200,000mPa・s |
吐出量
1秒間に吐出できる液体の量を指します。吐出量を細かくコントロールできる装置は精度が高く、製品の品質向上にも寄与します。 |
0.007ml/shot(1秒)~無制限 | 2.5~294 ml/shot | 記載なし |
吐出方式
液体を吐出する方法のことです。2液混合ディスペンサーは、連続的に液体をターゲットへ吐出する連続吐出と、その都度充填・吐出を行う間欠吐出があります。 |
連続吐出/ワンショット吐出/定量吐出/繰返し吐出/他機連動吐出 | 間欠吐出 | タイマー吐出/手動(連続)吐出 |
タンク容量
液体を貯めておくタンクの容量です。製品によって容量が大きく異なります。2液混合ディスペンサーは、主剤・硬化剤それぞれに独立したタンクがあります。 |
各15L・30L・50L・60L・ 80L・100L・200L ※A液・B液タンクの組み合わせは自由 |
20Lオープンタンク (ステンレス製) |
4L耐圧ガラスタンク×2基 |
公式HP
掲載の 対応液体例 2液混合ディスペンサーで利用できる液体の種類です。製品によって対応している液体の種類が異なるため、選定時はしっかり確認する必要があります。 |
記載なし | ||
【選定条件】
Googleで「混合吐出装置」と検索し(2024年5月16日調査時点)検索結果全ぺージに表示された公式HP14社、イプロスの「混合吐出機」ページ掲載企業の計18社を調査。
そのうち、2液混合ディスペンサーを扱う15社の中から、以下の条件で3製品を選定しています。
・マゼダスDタイプ…15社の製品のうち、吐出精度の保証値が±2~3%以内、実績値が±0.5%以内で最も高い2液混合ディスペンサー
・比率固定式HR-50…15社の製品のうち唯一、シンプルな構造により低価格化を実現と記載のある2液混合ディスペンサー
・STP-150…15社の製品のうち、吐出量が最も少ない2液混合ディスペンサー