2液混合ディスペンサーは、電子部品や自動車部品、建材などの生産ラインに欠かせない設備です。精密に計量・混合・吐出する性能は高い一方で、実際の生産現場では「タクト遅延」による問題がしばしば発生します。ここでいうタクト遅延とは、設定した生産サイクル時間よりも処理が遅れ、ライン全体のリズムが崩れる状態を指します。
このページでは、タクト遅延の兆候や原因、放置した場合のリスク、現場での確認項目、具体的な解決策までを詳しく解説します。
タクト遅延は、生産ラインにおける予定サイクルタイムを維持できなくなる現象です。具体的には「吐出が完了するまでに時間がかかる」「ライン搬送との同期が合わない」「硬化時間が想定以上に長引く」といった症状として現れます。兆候としては、製品の仕上がりペースが徐々に遅れる、装置の稼働音や制御画面に異常表示が出る、作業員が手待ち状態になるなどが挙げられます。
使用する樹脂の粘度や配合比に対して、設定された吐出速度や圧力が適切でない場合、混合や吐出に時間がかかりタクトが乱れます。特に低温環境下では液体の粘性が上がり、動作が遅延することがあります。
ディスペンサー単体は正常でも、ロボットやコンベアとの同期がずれるとタクトが合わなくなります。装置間の信号遅延やセンサー感度の劣化、PLC制御の設定不良が影響することがあります。
ポンプ、ノズル、シールなどの部品が摩耗すると吐出精度が低下し、調整作業に時間を要するようになります。またメンテナンス不足で固着や詰まりが発生すると、タクト全体が乱れる大きな原因となります。
タクト遅延を放置すると、生産性の低下が顕著になります。出荷計画に遅れが生じ、納期遅延による取引先とのトラブルに直結します。また、生産効率を補うために残業や増員が必要となり、コストが急増します。さらに、遅延をカバーするために無理な運転を続けると、装置への負荷が増し、さらなる故障を招く悪循環に陥ります。
これらをチェックすることで、タクト遅延の発生要因を早期に絞り込むことができます。
タクト遅延への対処は、装置の設定見直しと保全体制の強化が中心となります。
液体特性に応じて吐出圧力や速度を見直し、温度管理を行うことで粘度変動による遅延を防ぎます。必要に応じてヒーター付きホースや温調機能を追加するのも有効です。
PLCや制御盤の設定を見直し、搬送機器とディスペンサーの信号を正しく同期させることが重要です。センサーの感度確認やケーブル接続の点検も欠かせません。
部品摩耗や液体固着を防ぐために、定期交換と清掃をルール化します。ログ管理や稼働データの分析により、異常が発生する前に予兆を検知して対応できます。
工程設計段階で、余裕のないタクト設定をしてしまうと遅延が顕在化しやすくなります。ライン設計の見直しや作業分担の調整によって、安定したサイクルを確保できます。
2液混合ディスペンサーのタクト遅延は、生産ライン全体の効率を直撃する重大な問題です。原因を放置すれば、納期遅延や品質不良、コスト増大につながり、企業競争力を低下させます。
条件設定の最適化・同期調整・予防保全の徹底を行い、さらに余裕を持ったライン設計を導入することで、遅延のリスクを最小化できます。現場の小さな兆候を見逃さず、早期に対策を講じることが安定生産の鍵です。
液体の組み合わせによって必要なスペックが大きく異なる2液混合ディスペンサーだからこそ、使う目的によって装置を選ぶことが第一歩。
そのため、ここでは使用する環境や製造する製品から、適切な2液混合ディスペンサーをご紹介しています。
電子部品など
正確な吐出が必要なら
エイ・エム・ケイ |
大量生産品など
配合比がシンプルなら
ナカリキッドコントロール |
分析機器など
微量吐出を重視するなら
日本ソセー工業 |
|
製品名 | マゼダスDタイプ
![]() 引用元:エイ・エム・ケイ公式HP
(https://www.amk-j.co.jp/mazedas/d-type/) |
比率固定式HR-50
![]() 引用元:ナカリキッドコントロール公式HP
(https://www.nlc-dis.co.jp/products/double/hr50.html) |
STP-150
![]() 引用元:日本ソセー工業公式HP
(https://www.sosey.co.jp/product-list/supershot2/stp) |
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吐出精度
液体を吐出する精度を指します。メーカーによって保証値(カタログ上のスペック)と実績値が異なります。また、公表していないメーカーも中にはあります。 |
実績値:±0.1% (※吐出条件、樹脂仕様により要相談) |
高精度 ※詳細記載なし |
保証値:±1% |
混合比率
2液混合ディスペンサーで対応している主剤と硬化剤の割合のことです。主にミキサーとポンプの種類によって混合比率や調整の可否が変わります。 |
100:100~100:1 | 100:100~100:4 | 記載なし |
吐出速度
2液混合ディスペンサーが主剤と硬化剤を吐出するスピードのことです。カタログ上の吐出速度が速いと、ターゲットへスピーディに液体を吐出できます。 |
0.01ml/s~190ml/s | 記載なし | 0.0050ml/s~0.30ml/s |
適応粘度
2液混合ディスペンサーが対応している液体の粘度のことです。カタログと異なる粘度の液体を使用した場合、液だれやノズル詰まりなどを引き起こすおそれがあります。 |
1~100,000mPa・s/25℃ | 1~100,000 mPa・s/25℃ | ~200,000mPa・s |
吐出量
1秒間に吐出できる液体の量を指します。吐出量を細かくコントロールできる装置は精度が高く、製品の品質向上にも寄与します。 |
0.007ml/shot(1秒)~無制限 | 2.5~294 ml/shot | 記載なし |
吐出方式
液体を吐出する方法のことです。2液混合ディスペンサーは、連続的に液体をターゲットへ吐出する連続吐出と、その都度充填・吐出を行う間欠吐出があります。 |
連続吐出/ワンショット吐出/定量吐出/繰返し吐出/他機連動吐出 | 間欠吐出 | タイマー吐出/手動(連続)吐出 |
タンク容量
液体を貯めておくタンクの容量です。製品によって容量が大きく異なります。2液混合ディスペンサーは、主剤・硬化剤それぞれに独立したタンクがあります。 |
各15L・30L・50L・60L・ 80L・100L・200L ※A液・B液タンクの組み合わせは自由 |
20Lオープンタンク (ステンレス製) |
4L耐圧ガラスタンク×2基 |
公式HP
掲載の 対応液体例 2液混合ディスペンサーで利用できる液体の種類です。製品によって対応している液体の種類が異なるため、選定時はしっかり確認する必要があります。 |
記載なし | ||
【選定条件】
Googleで「混合吐出装置」と検索し(2024年5月16日調査時点)検索結果全ぺージに表示された公式HP14社、イプロスの「混合吐出機」ページ掲載企業の計18社を調査。
そのうち、2液混合ディスペンサーを扱う15社の中から、以下の条件で3製品を選定しています。
・マゼダスDタイプ…15社の製品のうち、吐出精度の保証値が±2~3%以内、実績値が±0.5%以内で最も高い2液混合ディスペンサー
・比率固定式HR-50…15社の製品のうち唯一、シンプルな構造により低価格化を実現と記載のある2液混合ディスペンサー
・STP-150…15社の製品のうち、吐出量が最も少ない2液混合ディスペンサー