2液混合ディスペンサーを導入する現場では、機器そのものの性能だけでなく、メーカーや販売代理店のサポート体制が非常に重要です。ところが実際には「問い合わせに対する返答が遅い」「修理部品の手配が滞る」「現場への対応が数週間先になる」といったサポート遅延が問題になるケースがあります。
ここでは、2液混合ディスペンサーにおけるサポート遅延の実態と原因、放置した場合のリスク、現場でできる確認事項、そして解決策までを詳しく解説します。
サポート遅延とは、装置の故障や不具合が発生した際に、メーカーや代理店からの対応が迅速に行われず、解決までに長い時間を要してしまう状況を指します。兆候としては、メールや電話での問い合わせに返答が遅れる、修理部品の納期が不明確なまま放置される、技術員派遣の日程調整が進まないなどが挙げられます。こうした状態が長引くと、現場の稼働率に大きな影響を及ぼすことになります。
サポート遅延の背景には、部品供給の遅れがあります。特に海外製装置や特殊部品を使用している場合、輸入ルートの混乱や在庫不足により修理対応が滞ることが多く見られます。
メーカーや代理店のサービス要員が限られている場合、問い合わせ対応が順番待ちになり、現場への訪問が大幅に遅れることがあります。特に繁忙期や年度末はトラブル対応が集中し、対応が後手に回りやすくなります。
現場からの不具合報告が正確に伝わらず、症状の切り分けに時間がかかるケースもあります。例えば「吐出不良」という報告だけでは、ポンプの問題か配管の詰まりか、制御系の不具合かを判断できず、解決までに余計な時間を要します。
サポート遅延を放置すると、生産ラインに深刻な影響を与えます。まず、装置停止が長引くことで出荷計画が狂い、納期遅延につながります。次に、代替手段として人手による混合や吐出を行えば、品質の安定性が損なわれる恐れがあります。さらに、現場スタッフのストレスや残業増加につながり、労務リスクやコスト増加も発生します。
これらを整理することで、サポート遅延の発生時でも対応を円滑に進めやすくなります。
サポート遅延を回避するには、メーカー任せにせず、事前準備と仕組みづくりが欠かせません。
よく消耗する部品や交換頻度が高い部品については、一定量を社内在庫として持っておくと修理待ち時間を短縮できます。特にシールやノズル、ミキシングチューブなどは備蓄が効果的です。
メーカーや代理店が提供する契約保守を利用すれば、優先的に対応を受けられるケースがあります。また、定期点検や予防交換もセットになっていることが多く、トラブルの未然防止にもつながります。
代理店だけでなく、メーカー本体や地域サービス拠点とも直接連絡が取れるようにしておくと、遅延リスクを軽減できます。連絡系統を複線化することが安定稼働につながります。
現場で発生したトラブル事例や対応方法を社内ナレッジとして蓄積することで、同様の不具合が発生した際に迅速な応急対応が可能になります。結果としてサポート依存度を下げ、遅延の影響を最小化できます。
2液混合ディスペンサーにおけるサポート遅延は、単なる不便さにとどまらず、生産計画や品質、コストに直結する重大なリスクです。原因を理解し、現場でできる対策を講じておけば、遅延によるダメージを大幅に抑えることができます。
予備部品の備蓄や契約保守の活用、複数窓口の確保、ナレッジ共有を進めることが、現場を守る最も現実的な手段です。早期に対応体制を整えることで、生産ラインの安定稼働を維持し、突発的なリスクにも柔軟に備えることができます。
液体の組み合わせによって必要なスペックが大きく異なる2液混合ディスペンサーだからこそ、使う目的によって装置を選ぶことが第一歩。
そのため、ここでは使用する環境や製造する製品から、適切な2液混合ディスペンサーをご紹介しています。
電子部品など
正確な吐出が必要なら
エイ・エム・ケイ |
大量生産品など
配合比がシンプルなら
ナカリキッドコントロール |
分析機器など
微量吐出を重視するなら
日本ソセー工業 |
|
製品名 | マゼダスDタイプ
![]() 引用元:エイ・エム・ケイ公式HP
(https://www.amk-j.co.jp/mazedas/d-type/) |
比率固定式HR-50
![]() 引用元:ナカリキッドコントロール公式HP
(https://www.nlc-dis.co.jp/products/double/hr50.html) |
STP-150
![]() 引用元:日本ソセー工業公式HP
(https://www.sosey.co.jp/product-list/supershot2/stp) |
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吐出精度
液体を吐出する精度を指します。メーカーによって保証値(カタログ上のスペック)と実績値が異なります。また、公表していないメーカーも中にはあります。 |
実績値:±0.1% (※吐出条件、樹脂仕様により要相談) |
高精度 ※詳細記載なし |
保証値:±1% |
混合比率
2液混合ディスペンサーで対応している主剤と硬化剤の割合のことです。主にミキサーとポンプの種類によって混合比率や調整の可否が変わります。 |
100:100~100:1 | 100:100~100:4 | 記載なし |
吐出速度
2液混合ディスペンサーが主剤と硬化剤を吐出するスピードのことです。カタログ上の吐出速度が速いと、ターゲットへスピーディに液体を吐出できます。 |
0.01ml/s~190ml/s | 記載なし | 0.0050ml/s~0.30ml/s |
適応粘度
2液混合ディスペンサーが対応している液体の粘度のことです。カタログと異なる粘度の液体を使用した場合、液だれやノズル詰まりなどを引き起こすおそれがあります。 |
1~100,000mPa・s/25℃ | 1~100,000 mPa・s/25℃ | ~200,000mPa・s |
吐出量
1秒間に吐出できる液体の量を指します。吐出量を細かくコントロールできる装置は精度が高く、製品の品質向上にも寄与します。 |
0.007ml/shot(1秒)~無制限 | 2.5~294 ml/shot | 記載なし |
吐出方式
液体を吐出する方法のことです。2液混合ディスペンサーは、連続的に液体をターゲットへ吐出する連続吐出と、その都度充填・吐出を行う間欠吐出があります。 |
連続吐出/ワンショット吐出/定量吐出/繰返し吐出/他機連動吐出 | 間欠吐出 | タイマー吐出/手動(連続)吐出 |
タンク容量
液体を貯めておくタンクの容量です。製品によって容量が大きく異なります。2液混合ディスペンサーは、主剤・硬化剤それぞれに独立したタンクがあります。 |
各15L・30L・50L・60L・ 80L・100L・200L ※A液・B液タンクの組み合わせは自由 |
20Lオープンタンク (ステンレス製) |
4L耐圧ガラスタンク×2基 |
公式HP
掲載の 対応液体例 2液混合ディスペンサーで利用できる液体の種類です。製品によって対応している液体の種類が異なるため、選定時はしっかり確認する必要があります。 |
記載なし | ||
【選定条件】
Googleで「混合吐出装置」と検索し(2024年5月16日調査時点)検索結果全ぺージに表示された公式HP14社、イプロスの「混合吐出機」ページ掲載企業の計18社を調査。
そのうち、2液混合ディスペンサーを扱う15社の中から、以下の条件で3製品を選定しています。
・マゼダスDタイプ…15社の製品のうち、吐出精度の保証値が±2~3%以内、実績値が±0.5%以内で最も高い2液混合ディスペンサー
・比率固定式HR-50…15社の製品のうち唯一、シンプルな構造により低価格化を実現と記載のある2液混合ディスペンサー
・STP-150…15社の製品のうち、吐出量が最も少ない2液混合ディスペンサー