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2液混合ディスペンサーの糸引きはなぜ起きる?原因と現場でできる5つの対策

「吐出は止めたのに、ノズルを離した途端に液が細く糸を引いてワークを汚してしまう……」
2液混合ディスペンサーを用いた接着やポッティングの現場で、このような「糸引き」に悩まされていませんか?

糸引きは、外観不良だけでなく、重大な機能不良やタクトロスを引き起こす厄介なトラブルです。しかし、やみくもに設定を変えても解決には至りません。なぜなら、糸引きの原因は「液剤そのものの性質」「吐出条件の設定」「機械・機構の限界」のどれにあるかで、取るべき対処法がまったく異なるからです。

本記事では、ディスペンサーの糸引きを5つの原因に切り分け、今日から現場で試せる具体的な対策までを網羅的に解説します。自社のトラブルの原因を特定し、最適な改善策を見つけましょう。

糸引きとは?液だれ・液切れ不良との違い

トラブルシューティングの第一歩は、発生している現象を正確に把握することです。ここでは、糸引きの定義と、よく混同される「液だれ」との違いを明確にします。

糸引きが起きているときの症状

糸引きとは、吐出を止めてノズルをワーク(対象物)から離そうとした際、液剤が切れずに細い糸状に伸びてしまう現象です。ご自身の現場で、以下のような症状は起きていませんか?

  • ノズルを離した瞬間に、液剤が細い糸のようにスーッと伸びる
  • 塗布終点(打ち終わり)に、意図しないヒゲ状の跡が残る
  • 伸びた糸が切れ、隣接する部品や治具の予期せぬ場所に付着する
  • 意図せず付着した糸がそのまま硬化し、異物となってしまう
  • 塗布終端の形状が安定せず、毎回異なった形(ダマになったり細くなったり)になる

これらの項目に当てはまる場合、あなたの現場で起きているのは典型的な「糸引き」トラブルです。

「液だれ」との違い ── 切れないのか、止まらないのか

糸引きと似たトラブルに「液だれ」がありますが、両者は原因も対策も全く異なるため、明確に区別する必要があります。

  • 糸引き: 吐出を止める瞬間に液が「切れない」現象。主に液剤の粘弾性(曳糸性)や、離間時の動作、サックバック(吸い戻し)の不足が原因です。
  • 液だれ: 吐出を止めた後にもかかわらず、液が「垂れ続ける」現象。主にシリンジや配管内の残留圧力、シール部分の劣化や不良、液剤へのエア噛みなどが原因で起こります。

もし現象が「液だれ」である場合は、内部圧の解放やパッキンの交換など別のアプローチが必要です。(詳しくは別記事「液だれの原因と対策について」をご覧ください。)

糸引きを放置すると起きる3つの損失

「たかが糸引き」と放置していると、生産ラインに致命的なダメージを与えかねません。糸引きがもたらす3つの大きな損失を理解しておきましょう。

損失① ワーク汚染による外観不良・機能不良

伸びた糸が意図しない箇所に落ちて硬化すると、製品の見た目を損なう「外観不良」となります。さらに深刻なのは「機能不良」です。例えば電子部品の製造工程において、糸引きした樹脂が端子や接点に付着したり、コネクタの嵌合(かんごう)部に回り込んだりすると、導通不良や組み立て不良に直結します。
2液混合の接着剤や樹脂は硬化すると非常に強固になるため、後から手作業で除去することは困難です。手直しが効かないため、結果として高価なワークごと廃棄せざるを得なくなり、大きな歩留まり低下を招きます。

損失② 塗布量のばらつきと接着強度の低下

糸引きが起きているということは、本来塗布されるべきだった液剤の一部が、糸として持ち去られている状態です。そのため、終端の形状が毎回変わり、塗布量が設定値内であったとしてもビード(線引き)形状やドット形状が安定しません。
これは、接着面積の不足やシール性の低下に直結し、製品ごとの接着強度にばらつきを生ませる原因となります。(関連:「吐出量ばらつきの原因と対策」)

損失③ 清掃・手直し工数によるタクトロス

糸引きによるワーク汚染を防ぐため、作業員が1サイクルごとにノズル先端をウエスで拭き取っている現場も少なくありません。しかし、1回の拭き取りに数秒かかるとすれば、量産ライン全体では膨大な時間のロスになります。
清掃や手直しのためのラインの一時停止は、段取り工数を増やし、稼働率を大きく押し下げます。こうした「隠れた不良コスト(タクト遅延やメンテナンス負荷)」は、利益を圧迫する大きな要因です。(関連:「ディスペンサーのタクト遅延・メンテナンス負荷の改善」)

2液混合ディスペンサーで糸引きが起きる5つの原因

糸引きトラブルを解決するには、どこに根本原因があるのかを見極める必要があります。ここでは、主に考えられる5つの原因と、それぞれが引き起こす特有の症状を解説します。

原因① 液剤そのものの曳糸性(粘弾性)が高い

最も根本的な原因は、使用している液剤の性質です。高粘度・高分子量の樹脂やシリコーン系接着剤などは、引き伸ばされたときにそのまま糸状に伸びようとする性質(曳糸性:えいしせい)を強く持っています。
注意すべきは、単に「粘度が高い」だけでなく「弾性成分が大きい」液剤ほど糸を引きやすいという点です。チクソトロピー性(チクソ性)の低い液剤は特に切れが悪くなります。まずは材料メーカーが提供しているデータシートを確認し、推奨される吐出条件を把握することが重要です。

原因② サックバック(吸い戻し)の量・タイミングが合っていない

サックバックとは、吐出終了時にノズル内の液剤をわずかに引き戻し、強制的に液を切る機能です。この設定が不適切だと糸引きが起きます。
引き戻す「量」が不足していれば当然糸は切れません。しかし、量が十分でも「引き戻す速度」が遅かったり、「吐出停止からの遅延時間」がずれていたりすると効果を発揮しません。逆にサックバックを強くしすぎると、ノズル先端から空気を吸い込んでしまい、次の吐出でボイド(気泡)が発生したり吐出量不足を招くため、絶妙な調整が求められます。

原因③ 温度低下と混合後の増粘(2液混合特有)

2液混合ディスペンサーならではの落とし穴が「時間経過と温度による粘度変化」です。
第一に、液温が下がると粘度が上がり、糸を引きやすくなります。これは「冬場」や「朝一番の稼働時」に多発するトラブルの典型です。
第二に、2液性の材料はミキサーで混合された瞬間から化学反応(硬化)が始まります。可使時間(ポットライフ)が経過するにつれて徐々に増粘していくため、ラインの小休止や段取り替えによる空き時間の直後の「1ショット目」は、非常に糸引きが出やすくなります。生産の間欠運転や待機時間が、症状に直結する点に注意が必要です。(関連:「2液混合のポットライフ管理について」)

原因④ ノズル・ミキサー先端の形状と液の付着・残渣

ノズル先端の状態も液切れに大きく影響します。液剤がノズル先端の外周に回り込んで濡れ広がっていると、表面張力によって液が先端に引っ張られ、切れにくくなります。
また、ノズルの内径が細すぎる、テーパー形状が液剤の粘度と合っていない、あるいは先端に硬化残渣(前回吐出した液の残りカス)が堆積している状態でも、正常な液切れを阻害します。定期的な清掃と交換周期の適切な管理が不可欠です。(関連:「ノズルの選び方とメンテナンス」「スタティックミキサー詰まりの原因」)

原因⑤ 吐出方式とノズルの離間動作

ディスペンサー自体の機構が原因であるケースも少なくありません。
例えば「エア(空圧)式」のディスペンサーは、空気圧の立ち上がり・立ち下がりにどうしても時間差(タイムラグ)が生じるため、止め際のキレが甘くなりがちです。対して、プランジャポンプやギヤポンプ、一軸偏心ねじポンプなどの「容積計量式」は、機械的な動作で液の押し出しと停止をダイレクトに制御できるため、止め際をシャープに管理できます。
また、機械の機構だけでなく、ロボットや自動機側の「塗布後のZ軸(上下方向)の上昇速度」や「塗布ギャップ(ノズルとワークの距離)」の設定が適切でない場合も、糸の伸び方を悪化させます。(関連:「ディスペンサーの吐出方式の違いと選び方」)

現場でできる糸引き対策5選

原因の見当がついたら、すぐに対策を実行しましょう。ここでは、現場で「お金や時間をかけずに今日から試せる順」に対策を5つ紹介します。

対策① サックバック条件(量・速度・遅延)を追い込む

まずは設定画面からサックバックの調整を行います。
【調整手順】

  1. サックバック「量」を小刻みに上げていき、糸がピタッと切れる点を探します。
  2. 糸が切れたら、次のショットを試し打ちし、断面や外観に気泡(空気を吸い込んだ跡)が入っていないか必ず確認します。
  3. 量を増やしすぎると空気を吸うトレードオフがあるため、限界が来たら「速度(引き戻すスピード)」を速くしたり、吐出停止からサックバック開始までの「遅延時間」を微調整して切れ味を出します。

対策② 液温を管理し、粘度を一定に保つ

温度変化による粘度のばらつきを抑えるため、タンク、シリンジ、配管などをヒーターや温調機で恒温管理します。粘度を一定に保つことで、糸引きの発生を安定して抑えることができます。
※注意点:加温することで硬化反応が促進され、ポットライフが短くなる液剤もあります。必ず材料メーカーが指定する推奨温度範囲内で行ってください。
「朝一番だけ糸引きが出る」という場合は、本番前の暖機運転や、捨て打ち(パージ)作業を標準手順として組み込むことも有効です。

対策③ ノズル先端の形状・内径・清掃周期を見直す

物理的に糸を引きにくい状態を作ります。

  • 塗布量に対してノズル内径が細すぎないかバランスを見直す。
  • 先端への濡れ広がりを抑えるため、フッ素コーティングされたノズルや、特殊なテーパー形状のノズルに変更する。
  • 自動ラインの場合は、拭き取り機構(ワイパーやエアブローによるパージ)を追加する。

日常点検の項目に「ノズル先端の清掃と定期交換」を組み込むだけでも、トラブルの発生率は劇的に下がります。(関連:「ディスペンサーの日常点検リスト」)

対策④ 塗布終端のノズル離間動作を最適化する

ロボットや自動機と連動している場合、プログラムのティーチングで解決できる余地があります。

  • 多段動作の導入: 塗布終点に達したら、いきなり高速で上へ引き上げるのではなく、いったん微小(数ミリ)だけゆっくりと上昇させて液を細くし、そこから一気に加速して断ち切るように動作を設定します。
  • テーパー動作: 終端に近づくにつれて吐出量(圧力や送り量)を徐々に絞っていくプログラムを組みます。
  • 塗布ギャップの適正化: ノズルとワークの距離が離れすぎていると糸を引きやすいため、適切なクリアランスに再設定します。(関連:「ロボット・自動ライン連携時の設定のコツ」)

対策⑤ 吐出方式そのものを見直す

①〜④の条件出しや調整を行っても一向に直らない場合、現在使用しているディスペンサーの機構(吐出方式)が、その液剤の粘度やタクトタイムに適合していない可能性が高いです。
エア式で限界を感じている場合は、物理的な液切れに優れた「容積計量式」への変更を検討してください。また、塗布形状が許すのであれば、ワークにノズルを近づけない「ジェット式(非接触式)」への移行も、糸引きという概念そのものを無くす最短の解決策となるケースがあります。(関連:「低粘度/高粘度別・ディスペンサーの選び方」)

【総合対策】液剤特性に合った機器選定が結局いちばん早い

現場での細かな条件出しには限界があります。無理な設定変更でしのいでも、気温の変化やロットのブレで再びトラブルが再発することが多々あります。
2液特有の増粘スピード、液剤の強い曳糸性、そして要求されるタクトタイム。これらを前提とした上で、「そもそも自社の液剤と工程に最適な吐出機構(ポンプ方式)を採用しているか?」を見直すことが、最も本質的で、結果的に一番早く・安く解決する道です。

症状別・糸引きの原因切り分け早見表

現場ですぐに原因を特定できるよう、症状と疑うべき原因の対応表を作成しました。トラブルシューティングにご活用ください。

発生している症状・タイミング 最も疑われる原因 最初に取るべきアクション
吐出停止後、液が全く切れずズルズル伸びる サックバック不足、液剤の曳糸性 サックバック量・速度の調整、ノズル形状変更
朝一番や冬場だけ糸を引く 温度低下による液剤の増粘 タンク・配管の加温(恒温管理)、暖機運転
ラインの一時停止後、最初のショットで糸を引く 2液混合後の経時増粘(ポットライフ) 待機時間の短縮、捨て打ち(パージ)の実施
サックバックを強くしても切れない/気泡が入る ディスペンサー機構の限界(エア式等) ロボット離間動作の多段化、容積計量式への変更
終端の跡がダマになったり、毎回形が変わる ノズル先端への液の回り込み・残渣 ノズル先端の清掃・拭き取り、コーティングノズル化

2液混合ディスペンサーの糸引きに関するQ&A

Q1.サックバックを強くしたら、今度は気泡が入るようになりました。

A. 吸い戻し過多により、ノズル先端から空気を巻き込んでいる状態です。まずはサックバック量を気泡が入らないレベルまで戻してください。その後、引き戻す「速度」を上げたり、吐出停止から吸い戻しまでの「遅延時間」を調整して切れ味を出します。ミキサー内の残留エアが原因の場合もあります。(関連:「気泡混入の原因と対策」)

Q2.同じ設備のまま液剤を変えたら糸引きが出るようになりました。

A. 粘度のカタログスペックが同じでも、液剤の成分による「粘弾性(曳糸性)」が異なれば、止め際の挙動は全く変わります。液剤を変更した場合は、過去の設定をそのまま流用せず、サックバック量、液温、ノズル径などの再条件出しを行うことが大前提となります。

Q3.冬場や朝一番だけ糸を引きます。

A. 液温低下による材料の増粘が典型的な原因です。対策として、温調機による恒温管理や、作業前の暖機運転・捨て打ちの標準化を推奨します。まずは、現場の温度計の記録と糸引き発生率の相関データを取ってみることから始めてください。

Q4.ジェット式(非接触)にすれば糸引きは無くなりますか?

A. ノズルをワークに接触させず液剤を飛ばすため、糸を引く場面自体を減らせる可能性は高いです。ただし、液剤の粘度が高すぎる場合やフィラー(充填剤)を含む場合、また求める塗布形状によってはジェット式が適用できないこともあります。必ず実液での吐出テストを実施してください。

THREE SELECTIONS
目的別で失敗なく選ぶ
2液混合ディスペンサー3選
比較表

液体の組み合わせによって必要なスペックが大きく異なる2液混合ディスペンサーだからこそ、使う目的によって装置を選ぶことが第一歩。
そのため、ここでは使用する環境や製造する製品から、適切な2液混合ディスペンサーをご紹介しています。

▼左右にスクロールできます。
電子部品など
正確な吐出が必要なら
エイ・エム・ケイ
大量生産品など
配合比がシンプルなら
ナカリキッドコントロール
分析機器など
微量吐出を重視するなら
日本ソセー工業
製品名
マゼダスDタイプ
マゼダスDタイプ
引用元:エイ・エム・ケイ公式HP
(https://www.amk-j.co.jp/mazedas/d-type/)

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スペック詳細をみる

電話で問合せる

比率固定式HR-50
非固定式HR-50
引用元:ナカリキッドコントロール公式HP
(https://www.nlc-dis.co.jp/products/double/hr50.html)

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電話で問合せる

STP-150
STP-150
引用元:日本ソセー工業公式HP
(https://www.sosey.co.jp/product-list/supershot2/stp)

公式HPで
スペック詳細をみる

電話で問合せる

実績値:±0.1%
 (※吐出条件、樹脂仕様により要相談)
高精度
※詳細記載なし
保証値:±1%
100:100~100:1 100:100~100:4 記載なし
0.01ml/s~190ml/s 記載なし 0.0050ml/s~0.30ml/s
1~100,000mPa・s/25℃ 1~100,000 mPa・s/25℃ ~200,000mPa・s
0.007ml/shot(1秒)~無制限 2.5~294 ml/shot 記載なし
連続吐出/ワンショット吐出/定量吐出/繰返し吐出/他機連動吐出 間欠吐出 タイマー吐出/手動(連続)吐出
各15L・30L・50L・60L・
80L・100L・200L
※A液・B液タンクの組み合わせは自由
20Lオープンタンク
(ステンレス製)
4L耐圧ガラスタンク×2基
エポキシ
発泡ウレタン
ウレタン
シリコン
塗料
アクリル
発泡シリコン
インク他
一般的な樹脂からフィラーを含む樹脂
記載なし
ウレタン
エポキシ
シリコン
その他液体材料

エイ・エム・ケイの
公式HPで
吐出テストの相談をする

ナカリキッドコントロールの
公式HPで
吐出テストの相談をする

日本ソセー工業の
公式HPで
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【選定条件】
Googleで「混合吐出装置」と検索し(2024年5月16日調査時点)検索結果全ぺージに表示された公式HP14社、イプロスの「混合吐出機」ページ掲載企業の計18社を調査。
そのうち、2液混合ディスペンサーを扱う15社の中から、以下の条件で3製品を選定しています。
・マゼダスDタイプ…15社の製品のうち、吐出精度の保証値が±2~3%以内、実績値が±0.5%以内で最も高い2液混合ディスペンサー
・比率固定式HR-50…15社の製品のうち唯一、シンプルな構造により低価格化を実現と記載のある2液混合ディスペンサー
・STP-150…15社の製品のうち、吐出量が最も少ない2液混合ディスペンサー